制度・実務

仕事と介護の両立支援制度の一覧|法定7制度と事業主の義務

監修 東急ウェルネス株式会社 介護離職防止サポート 責任者 A.T.

仕事と介護の両立支援制度を確認する人事担当者

仕事と介護の両立支援制度は、「介護休業」と「介護休暇」だけではありません。育児・介護休業法は、労働者が使える制度を7つ定めており、そのうち介護休業と介護休暇以外の5つは、休まずに働き方を変えるための制度です。実際に多くの従業員が必要とするのは後者ですが、社内で案内されているのは前者だけ、ということが起こりがちです。本記事では、労働者が使える7制度と、事業主に課される5つの措置を、根拠条文とあわせて一覧で整理します。

全体像|「休む制度」と「働き方を変える制度」

育児・介護休業法が定める仕事と介護の両立支援制度は、次の7つです※1。個々の言葉の意味は介護用語集でも確認できます。制度を覚えるより、2つの系統に分けて把握するほうが実務では役に立ちます。

  • 休むための制度(2つ)|介護休業/介護休暇
  • 働き方を変える制度(5つ)|所定外労働の制限/時間外労働の制限/深夜業の制限/所定労働時間の短縮等の措置/介護のためのテレワーク

押さえておきたい考え方:介護は、いつ終わるか分からないまま続きます。93日の介護休業を使い切ることが目的ではなく、働きながら介護を続けられる状態をつくることが目的です。その意味で、実務上より多く使われるのは後者の5つです。社内の案内が介護休業と介護休暇だけになっていないか、確認してみてください。

休むための制度|介護休業と介護休暇

この2つは名前が似ているため、社内でも従業員からの質問でも最も混同されます。まとまった期間か、単発かで使い分けます。

制度1

介護休業

対象家族1人につき通算93日まで、3回を上限に分割取得できます。介護の体制を整えるためのまとまった休業として位置づけられています※1。要件を満たせば雇用保険から介護休業給付金が支給されます。

制度2

介護休暇

年5日(対象家族が2人以上の場合は年10日)。通院の付き添いや介護保険の手続きなど、日常的な介護のニーズにスポット的に対応するために利用するものとされています※1。2025年4月改正で要件が緩和されました。

日数・給付金の有無・申出方法の違いは介護休暇と介護休業の違い【比較表】給与・給付金・日数で比較表にまとめています。給付金の実務は介護休業給付金の必要書類と支給申請書の記入例|会社の実務をご覧ください。

働き方を変える5つの制度

ここが手薄になっている企業が多い領域です。いずれも就業規則などに規定され、制度として導入されていることが求められます※1。運用で対応しているだけでは足りません。

1

所定外労働の制限(残業免除)|法第16条の9

要介護状態にある対象家族を介護する労働者が請求した場合、事業の正常な運営を妨げる場合を除き、所定労働時間を超えて労働させることはできません※1。請求は1回につき1か月以上1年以内の期間で、開始予定日の1か月前までに行います。回数の上限はなく、介護が終わるまで何度でも請求できます※1

2

時間外労働の制限|法第18条

請求があった場合、1か月について24時間、1年について150時間を超える時間外労働をさせることはできません※1。請求の単位は1か月以上1年以内で、1か月前までの請求です。1の残業免除とは別の制度で、こちらは上限つきで残業を認める形になります。

3

深夜業の制限|法第20条

請求があった場合、深夜(午後10時から午前5時)に労働させることはできません※1。請求の単位は1か月以上6か月以内で、他の2つより短くなっています。深夜に対象家族を常態として介護できる同居の家族がいる労働者は請求できません※1。交代勤務がある職場では、この制度の運用設計が要点になります。

4

所定労働時間の短縮等の措置|法第23条第3項

事業主は、対象家族1人につき、利用開始の日から連続する3年間以上の期間において、短時間勤務・フレックスタイム制・時差出勤・介護サービス費用の助成のいずれか1つ以上を講じなければなりません※12回以上利用できる措置であることも要件です。詳しくは介護の短時間勤務|所定労働時間の短縮等の措置と4つの選択肢で解説しています。

5

介護のためのテレワーク|2025年4月から努力義務

2025年4月1日から、要介護状態の対象家族を介護する労働者がテレワークを選択できるよう措置を講ずることが、事業主の努力義務となりました※1。他の4つと違って義務ではありませんが、遠距離介護や、通院の付き添いが重なる時期に最も効く手段でもあります。

実務上の注意:1〜3はいずれも労使協定で対象外にできる労働者の範囲が定められています(継続雇用期間1年未満、週の所定労働日数2日以下など)※1。自社の労使協定に除外規定を置いている場合、その範囲が法令の想定を超えていないか点検してください。規定例は就業規則の介護休業規定|規定例と労使協定のチェックで扱っています。

「介護両立支援制度等」とは|法令上の定義

2025年4月改正の条文には「介護両立支援制度等」という言葉が繰り返し出てきます。曖昧な総称ではなく、次の5つを指す法令上の用語です※1

  • 介護休暇に関する制度
  • 所定外労働の制限に関する制度
  • 時間外労働の制限に関する制度
  • 深夜業に関する制度
  • 介護のための所定労働時間の短縮等の措置

介護休業はこの5つに含まれません。条文では「介護休業及び介護両立支援制度等」と並べて書かれます。個別周知や雇用環境の整備の対象を読むときに、この区別を知っていないと範囲を取り違えます。

事業主に課される5つの措置

労働者が使う制度とは別に、事業主自身が講じなければならない措置があります。2025年4月改正で3つが追加され、対応の範囲が広がりました。

1

雇用環境の整備(2025年4月〜)

申出が円滑に行われるよう、①研修の実施 ②相談体制の整備 ③自社の利用事例の収集・提供 ④制度と利用促進の方針の周知のいずれかを講じます※1。研修は社内向け介護セミナーの企画|対象者別のテーマと進め方、相談体制は企業の介護相談窓口|設置の要件と運用・外部委託の判断で扱っています。

2

個別の周知・意向確認(2025年4月〜)

介護に直面したことを申し出た従業員に対し、介護休業・介護両立支援制度等を個別に周知し、利用の意向を確認します※1。周知すべき事項には介護休業給付金に関することが含まれます

3

早い段階(40歳等)での情報提供(2025年4月〜)

介護に直面する前の早い段階で、制度に関する情報を提供します※1。運用の作り方は40歳到達時の介護情報提供義務とは?何を・いつ・どう配ればよいかをご覧ください。

4

不利益取扱いの禁止

制度の申出や利用を理由とする解雇その他の不利益な取扱いは禁止されています※1本人を思っての配慮であっても、意向を確認しないまま担当や配置を変えれば不利益取扱いになり得ます。

5

ハラスメントの防止措置

制度の利用に関する言動により就業環境が害されることのないよう、相談に応じ適切に対応するための体制整備等が求められます※1。具体的な言動例はケアハラ(ケアハラスメント)とは|言動の具体例と防止措置4つで解説しています。

自社の整備状況を確認する

制度は7つ、措置は5つあります。抜けが起きやすいのは、就業規則に書いていない制度です。次の順で点検してください。

改正対応の全体像は育児・介護休業法改正|介護分野の実務対応チェックリストで、対策全体の組み立ては介護離職を防ぐには|企業がとるべき対策を体系的に解説でご確認いただけます。

お役立ち資料 育児・介護休業法 改正対応チェックリスト 2025年4月1日施行の改正について、自社の対応状況を4区分で確認できるA4・1枚の資料です。印刷してそのまま会議に配れます(別タブで開きます)。 資料を開く

よくあるご質問

「介護両立支援制度等」には介護休業も含まれますか?

含まれません。育児・介護休業法における「介護両立支援制度等」とは、介護休暇に関する制度、所定外労働の制限に関する制度、時間外労働の制限に関する制度、深夜業に関する制度、介護のための所定労働時間の短縮等の措置の5つを指します。介護休業はこれとは別に位置づけられており、条文では「介護休業及び介護両立支援制度等」と並べて記載されます。個別周知や雇用環境の整備の対象範囲を読むときは、この区別を押さえておく必要があります。

所定外労働の制限と時間外労働の制限は何が違うのですか?

所定外労働の制限は、事業の正常な運営を妨げる場合を除き、所定労働時間を超えて労働させることができなくなる制度です。いわゆる残業免除にあたります。一方の時間外労働の制限は、1か月について24時間、1年について150時間を超える時間外労働をさせることができなくなる制度で、上限つきで残業を認める形になります。別々の制度なので、就業規則には両方を規定する必要があります。請求の単位はどちらも1か月以上1年以内で、開始予定日の1か月前までに請求します。

7つの制度をすべて就業規則に規定する必要がありますか?

介護のためのテレワークは努力義務ですが、それ以外の6つは制度として導入し、就業規則などに記載されるべきものとされています。所定労働時間の短縮等の措置については、4つの選択肢のうち少なくとも1つを講じれば足ります。なお「措置を講じている」とは就業規則等に規定され制度化された状態を指し、運用で対応しているだけでは足りないとされています。自社の規程に記載がない制度がないか、法定の一覧と突き合わせて確認してください。

出典

※本記事は2026年8月時点の情報に基づいて作成しています。制度の詳細や個別の適用については、所轄の労働局またはお近くの社会保険労務士等の専門家にご確認ください。

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