介護休暇と介護休業の違い【比較表】日数・給付金・申出方法
監修 東急ウェルネス株式会社 介護離職防止サポート 責任者 A.T.
「介護休業」と「介護休暇」は名称が似ているため、人事担当者でも混同しやすい制度です。しかし日数・給付・申出方法のすべてが異なり、従業員へ誤った案内をすると制度が使われないまま離職につながることもあります。本記事では両者の違いを整理し、従業員から質問を受けた際にそのまま使える説明例までご紹介します。なお法定の両立支援制度はこの2つを含めて7つあり、全体像は仕事と介護の両立支援制度の一覧にまとめています。
一覧で比較|介護休暇と介護休業の違い
まず全体像を押さえます。最も大きな違いは「まとまった期間の休み」か「1日単位・時間単位の休み」かという点です。
| 介護休業 | 介護休暇 | |
|---|---|---|
| 目的 | 介護の体制を整えるためのまとまった休業 | 通院の付き添いなど日常的な対応 |
| 取得できる日数 | 対象家族1人につき通算93日まで | 年5日まで(対象家族が2人以上の場合は年10日まで) |
| 分割取得 | 3回まで分割可能 | 1日単位・時間単位で取得可能 |
| 給付金 | 介護休業給付金(賃金の約67%) | 給付金なし |
| 申出のタイミング | 原則として開始予定日の2週間前まで | 当日の申出も可能 |
| 会社からの賃金 | 法律上の支払義務なし(雇用保険から給付金) | 法律上の支払義務なし(給付金もなし) |
| 労使協定で除外できる者 | ①入社1年未満 ②申出から93日以内に雇用終了が明らか ③週の所定労働日数2日以下 | 週の所定労働日数2日以下のみ(2025年4月に「継続雇用6か月未満」の除外は廃止) |
| 対象家族の範囲 | 両制度とも同じ:配偶者(事実婚を含む)、父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫 | |
| 主な用途 | 施設探し、要介護認定の申請、退院後の体制づくり | 通院の付き添い、ケアマネジャーとの面談、介護サービスの手続き |
押さえておきたい考え方:介護休業は「自分が介護をするための休み」ではなく、介護と仕事を両立できる体制を整えるための準備期間です。93日という日数は介護そのものを担うには短く、この期間に介護サービスの利用体制を構築することが本来の趣旨です。
介護休業とは|長期の体制づくりのための制度
取得できる日数と分割
要介護状態にある対象家族1人につき、通算93日まで、3回を上限に分割して取得できます。分割できるため、「入院時」「退院・施設入所の調整時」「状態が変化したとき」といった山場ごとに使う運用が可能です。
介護休業給付金
介護休業期間中、法律上は事業主に賃金の支払い義務はありません。ただし一定の要件を満たす場合、雇用保険から賃金の約67%にあたる介護休業給付金が支給されます。
実務上の注意:「介護休業は無給だから」という理由で取得をあきらめ、退職を選んでしまう従業員が少なくありません。給付金の存在は必ずセットで案内してください。相談窓口で最も反応が大きい情報のひとつです。
申出の方法
原則として、休業開始予定日の2週間前までに申し出ることとされています。ただし介護は突発的に発生するため、緊急時の運用について社内であらかじめ整理しておくことが望まれます。
介護休暇とは|日常的な対応のための制度
取得できる日数
年5日まで(対象家族が2人以上の場合は年10日まで)取得できます。1日単位のほか、時間単位での取得も可能です。
時間単位取得の実務的な価値
「午前中だけ通院に付き添い、午後から出社する」といった使い方ができるため、就業時間への影響を最小限に抑えられます。有給休暇を1日消化するしかない状況と比べ、従業員の負担も企業の労働力の損失も小さくなります。
周知のポイント:時間単位で取得できることを知らない従業員が多く、結果として有給休暇や欠勤で対応しているケースが見られます。制度が「ある」ことと「使える」ことは別なので、具体的な使用場面とあわせて周知することが有効です。
介護休暇に賃金は出るのか|有給・無給と給付金の扱い
介護休暇について従業員から最も多く受ける質問がこれです。結論から書くと、事業主に賃金を支払う義務はなく、雇用保険からの給付金もありません。同じ「休み」でも介護休業とは扱いが大きく異なります。
無給としても法律違反にはならない
育児・介護休業法は介護休暇を取得できる権利を定めていますが、その日の賃金については何も定めていません。厚生労働省の指針も、介護休暇を取得した日の「現に働かなかった時間について賃金を支払わないこと」は不利益な取扱いに該当しないと明示しています。有給とするか無給とするかは、各社が就業規則で定める事項です。
ただし介護休暇は、労働基準法第39条の年次有給休暇とは別に与える必要があります。年休の残日数から差し引く運用はできません。
介護休業給付金は、介護休暇には支給されない
雇用保険の介護休業給付金は、負傷・疾病・障害により2週間以上にわたり常時介護を必要とする状態にある対象家族について、介護休業を取得した場合の給付です(同じ家族について通算93日を限度に3回まで)。年5日を1日単位や時間単位で取得する介護休暇は、この枠組みに入りません。
従業員への説明のポイント:「介護休業は給付金で賃金の約67%が補われるが、介護休暇は無給(自社で有給としている場合はその旨)」と並べて伝えると、どちらを使うべきかの判断がつきやすくなります。金銭面を伏せたまま制度だけ案内すると、想定と違う手取りになって制度そのものへの不信につながります。
無給にできる範囲には線がある
賃金を支払わないこと自体は問題ありませんが、次の3つは不利益取扱いに当たります。
- 取得した日数を超えて控除する。賞与や退職金の算定で勤務日数を考慮する場合、日割りで差し引けるのは実際に休暇を取得した日数分までです。それを超えて働かなかったものとして扱うと「不利益な算定」に該当します。
- 取得の申出だけを理由に減額する。実際には労務の不提供が生じていないのに、申し出たことのみをもって賃金・賞与・退職金を減らすことはできません。
- 人事考課で不利に評価する。昇進・昇格の選考において、休暇を取得したことを理由に不利益な評価を行うことは認められていません。
年次有給休暇の出勤率では、扱いが介護休業と違う
見落とされやすい論点です。年次有給休暇の権利発生に関わる出勤率の算定では、育児休業と介護休業の期間は出勤したものとみなさなければならないと労働基準法に定められています。一方で介護休暇は、このみなし規定の対象に含まれていません。
したがって、介護休暇を取得した日を出勤率の計算でどう扱うかは、自社の規定で決めておく必要があります。無給かつ欠勤扱いのまま放置すると、休暇を取ったことが翌年の年休付与に響く運用になりかねません。
就業規則で確認したい3点:①介護休暇を有給とするか無給とするか ②時間単位で取得した場合の控除方法 ③年次有給休暇の出勤率算定における取扱い。この3つが書かれていない規程が多く、運用のたびに判断がぶれます。規定例は就業規則の介護休業規定にまとめています。
実際の場面別|どちらを案内すべきか
介護休業が適する場面
親が退院するとき
退院後の生活体制を整えるには、要介護認定の申請、ケアマネジャーとの調整、施設見学など多くの手続きが必要です。まとまった期間の確保が有効です。
介護休業が適する場面
施設を探すとき
複数施設の見学や入居手続きには時間がかかります。特に遠距離介護の場合は移動時間も必要です。
介護休暇が適する場面
通院に付き添うとき
月1〜2回の定期通院であれば、時間単位の介護休暇で対応できます。
介護休暇が適する場面
ケアマネジャーと面談するとき
ケアプランの作成・見直しの打ち合わせなど、数時間で済む対応に向いています。
2025年4月改正|介護休暇の要件が緩和されました
2025年4月1日施行の育児・介護休業法改正により、介護休暇の対象範囲が広がりました。
2025年3月31日まで
労使協定により、継続雇用期間が6か月未満の労働者を介護休暇の対象から除外できました。
2025年4月1日以降
継続雇用期間による除外の仕組みが廃止されました。労使協定を締結している場合に除外できるのは週の所定労働日数が2日以下の労働者のみです。
要確認:労使協定や就業規則に「継続雇用6か月未満の労働者を除く」という規定が残っている場合、改正内容に合わせた見直しが必要です。入社間もない従業員も対象となります。
そのまま使える従業員向け説明例
従業員から相談を受けた際、次のように説明すると理解されやすくなります。
「介護には2つの制度があります。ひとつは介護休業で、通算93日までまとまってお休みできる制度です。3回に分けられるので、入院のとき、退院して体制を整えるとき、というように使えます。給与は会社からは出ませんが、雇用保険から給与の約67%が支給されます。
もうひとつは介護休暇で、こちらは年5日まで、1時間単位でも取れます。通院の付き添いやケアマネジャーさんとの打ち合わせなど、短時間の用事に向いています。
まずはご家族の状況を伺ったうえで、どちらが使えそうかご一緒に考えましょう。」
ポイントは制度名の説明から入るのではなく、「どのような場面で活用できるのか」を具体的に伝えることが大切です。まずは仕事と介護の両立を支える選択肢があることを伝え、安心感を持ってもらったうえで、利用できる制度や支援策を案内しましょう。
給付金の申請実務は介護休業給付金の必要書類と支給申請書の記入例|会社の実務、自社の規程が改正に対応しているかの点検は就業規則の介護休業規定の見直しで解説しています。制度整備を含めた取り組み全体の進め方は介護離職を防ぐには|企業がとるべき対策を体系的に解説をご覧ください。
よくあるご質問
介護休業と介護休暇は同時に利用できますか?
それぞれ別の制度のため、要件を満たせば併用できます。長期の対応が必要な局面では介護休業、通院の付き添いなど単発の対応では介護休暇、というように使い分けます。
介護休業中の給与はどうなりますか?
法律上、事業主に賃金の支払い義務はありません。ただし一定の要件を満たす場合、雇用保険から介護休業給付金として賃金の約67%が支給されます。無給になると誤解して取得をためらう従業員が多いため、給付金の存在を必ず案内してください。
介護休暇は有給にしなければなりませんか?
法律上の義務はありません。厚生労働省の指針でも、介護休暇を取得した日の働かなかった時間について賃金を支払わないことは、不利益な取扱いに該当しないとされています。有給とするか無給とするかは就業規則で定めます。ただし年次有給休暇とは別に与える必要があるため、年休の残日数から差し引くことはできません。
入社したばかりの従業員も介護休暇を取得できますか?
取得できます。2025年4月1日の法改正により、継続雇用期間6か月未満の労働者を労使協定で除外する仕組みが廃止されました。除外できるのは週の所定労働日数が2日以下の労働者のみです。
出典
※本記事は2026年8月時点の情報に基づいて作成しています。給付金の支給要件や支給率は改定される場合があります。制度の詳細や個別の適用については、所轄の労働局・ハローワークまたは社会保険労務士等の専門家にご確認ください。
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