制度・実務

介護の短時間勤務|所定労働時間の短縮等の措置と4つの選択肢

監修 東急ウェルネス株式会社 介護離職防止サポート 責任者 A.T.

介護と両立できる働き方を検討する従業員

介護休業93日は体制を整えるための時間ですが、介護そのものは何年も続きます。その長い期間を支えるのが所定労働時間の短縮等の措置です。事業主には、対象家族1人につき利用開始の日から連続する3年間以上の期間にわたり、2回以上利用できる制度として講じる義務があります※1。選択肢は4つあり、そのうち1つ以上を制度化すれば要件を満たします。本記事では、4つの中身と、規程に落とすときの要点を整理します。

何が義務なのか|3年以上・2回以上

育児・介護休業法第23条第3項は、事業主に次の措置を義務づけています※1

事業主は、要介護状態にある対象家族を介護する労働者について、就業しつつ対象家族の介護を行うことを容易にする措置として、当該家族1人当たり利用開始の日から連続する3年間以上の期間における所定労働時間の短縮等の措置を講じなければなりません。また、この措置は2回以上の利用ができる措置としなければなりません※1

読み落とされやすいのが次の2点です。

  • 「3年間」は対象家族1人あたりです。父と母の両方を介護する場合、それぞれについて3年間以上の期間が必要になります
  • 起算日は、労働者が利用を開始する日として申し出た日です。※1 たとえば3月1日に「4月1日から短時間勤務を利用したい」と申し出た場合、少なくとも4月1日から起算して3年である3年後の3月31日まで利用できる制度である必要があります※1

介護休業(通算93日・3回まで)と混同されやすいところですが、まったく別の制度で、日数の枠も共有しません。介護休業を93日使い切った従業員も、この措置は使えます。

4つの選択肢

措置は、次のいずれかの方法により講じなければなりません※1①〜③は2回以上利用できる措置であることが必要で、④は対象外です※1

1

短時間勤務の制度

次の4つの形が示されています※1
a 1日の所定労働時間を短縮する制度
b 週または月の所定労働時間を短縮する制度
c 週または月の所定労働日数を短縮する制度(隔日勤務や、特定の曜日のみの勤務等)
d 労働者が個々に勤務しない日または時間を請求することを認める制度

cとdは見落とされがちです。毎日1時間短くするより、週1日休めるほうが助かるという声は実務でよく聞きます。通院の付き添いは曜日が固定されることが多いためです。

2

フレックスタイム制

始業・終業の時刻を労働者が決められる制度です。すでに全社で導入している企業は、介護のための措置としても位置づけられるかを確認してください。ただし、コアタイムが長いと実質的に使えないことがあります。

3

時差出勤の制度

始業または終業の時刻を繰り上げ、または繰り下げる制度です※1。労働時間そのものは減らないため、収入を減らさずに済むのが利点です。朝のデイサービスの送り出しや、夕方の帰宅対応に合わせる使い方ができます。

4

介護サービス費用の助成その他これに準ずる制度

労働者が利用する介護サービスの費用を助成する制度です※1。働き方は変えずに、金銭面から支える形になります。この措置だけは「2回以上利用できる措置」の要件から除かれています※1

どれを選ぶか|判断の軸

事業主は4つのうち少なくとも1つを講ずれば足り、労働者の求めの都度これに応じた措置を講ずることまで義務づけられているわけではありません※1。ただし可能な限り労働者の選択肢を広げるよう工夫することが望まれるとされています※1

短時間勤務 時差出勤
労働時間 減る 変わらない
収入への影響 時間に応じて減ることが多い 原則として影響しない
向いている場面 日中に介護の対応が必要/通院が多い 朝夕の決まった時間に対応が要る
導入の負荷 賃金・評価の取扱いを決める必要がある 比較的小さい
職場での運用 業務量の再配分が要る 引継ぎ時間の確保が要る

1つだけ選ぶなら、短時間勤務を軸に置くのが無難です。法令上も「特に短時間勤務の制度は、労働者が要介護状態にある対象家族を介護することを実質的に容易にする内容のものであることが望ましい」とされています※1。そのうえで時差出勤を併設できると、収入を減らしたくない層にも届きます。

対象になる労働者・除外できる労働者

期間を定めて雇用される者は対象となります。有期雇用だからという理由で除外することはできません※1

一方、次の労働者は対象となりません※1

  • 日々雇い入れられる者
  • 労使協定で適用除外とされた、その事業主に継続して雇用された期間が1年に満たない労働者
  • 労使協定で適用除外とされた、1週間の所定労働日数が2日以下の労働者

実務上の注意:除外は労使協定を締結してはじめて有効になります。就業規則に除外規定だけを書いても効力はありません。また、除外できる範囲は上記に限られており、これを超える除外規定は無効です。自社の労使協定に、法令にない除外要件が入っていないかを点検してください。規程の見直しは就業規則の介護休業規定|規定例と労使協定のチェックで扱っています。

短縮幅の目安

法令は具体的な時間数を義務づけていませんが、指針で望ましい水準が示されています※1

  • 所定労働時間が8時間の場合は2時間以上の短縮
  • 所定労働時間が7時間以上の場合は1時間以上の短縮

30分だけ短縮する制度は、要件としては満たしても「実質的に容易にする内容」とは言いにくいことになります。事業主は措置を講ずるにあたって、労働者が就業しつつ対象家族を介護することを実質的に容易にする内容のものとすることに配慮することが求められています※1

規程に落とすときの注意

この措置でつまずくのは、多くの場合「制度として書いていない」ことです。

  • 「措置を講じている」とは、短時間勤務制度が就業規則等に規定される等、制度化された状態を指します。運用で行われているだけでは不十分です※1
  • 2回以上利用できることを明記する。「1回限り」と読める書き方になっていると要件を満たしません(④の費用助成を除く)
  • 3年間の起算点を書く。申し出た利用開始日から起算する旨を明記します
  • 対象家族1人ごとである旨を書く。複数の家族を介護する場合に取り違えが起きます
  • 賃金・賞与・退職金・人事評価の取扱いを決めておく。ここが空白だと運用が止まります。ただし制度利用を理由とする不利益取扱いは禁止されています

残業免除や深夜業の制限といった隣接の制度は仕事と介護の両立支援制度の一覧|法定7制度と事業主の義務で全体像を確認できます。制度を作ったあとの周知は社内向け介護セミナーの企画|対象者別のテーマと進め方をご覧ください。

よくあるご質問

介護休業の93日とは別枠ですか?

別の制度です。介護休業は対象家族1人につき通算93日・3回までのまとまった休業で、介護の体制を整えるために使うものと位置づけられています。一方、所定労働時間の短縮等の措置は、働きながら介護を続けるための措置で、対象家族1人につき利用開始の日から連続する3年間以上の期間にわたり、2回以上利用できる制度として講じることが事業主に義務づけられています。日数の枠は共有しないため、介護休業を93日使い切った従業員も、この措置を利用できます。

短時間勤務、フレックス、時差出勤、費用助成の4つすべてを用意する必要がありますか?

必要ありません。事業主は4つのうち少なくとも1つを講ずれば足り、労働者の求めの都度それに応じた措置を講ずることまでは義務づけられていません。ただし、可能な限り労働者の選択肢を広げるよう工夫することが望まれるとされています。実務上は、短時間勤務を軸に置いたうえで時差出勤を併設する形が扱いやすく、収入を減らしたくない層にも届きます。なお費用助成の措置だけは、2回以上利用できる措置という要件の対象から除かれています。

すでに全社でフレックスタイム制を導入していますが、これで要件を満たしますか?

フレックスタイム制は4つの選択肢のひとつなので、制度として就業規則等に規定されており、介護を行う労働者が対象家族1人につき利用開始から連続する3年間以上の期間で2回以上利用できる形になっていれば、要件を満たし得ます。ただし全社制度をそのまま流用する場合は、コアタイムが長く実質的に使えない状態になっていないか、介護を理由とする利用が想定されているかを確認してください。法令は、労働者が就業しつつ介護を行うことを実質的に容易にする内容とすることに配慮するよう求めています。

介護短時間勤務は3年間で2回とはどういう意味ですか?

「連続する3年間以上の期間」で措置を用意し、そのあいだに「2回以上利用できる」ようにする、という2つの条件を同時に満たすという意味です。育児・介護休業法第23条第3項が事業主に義務づけています。3年のうち一度使い終わったら終わり、という設計にはできません。いったん通常勤務に戻ったあと、同じ対象家族についてもう一度利用できる形にしておく必要があります。

介護短時間勤務は何時間ですか?

法令は具体的な時間数を義務づけていません。指針では、所定労働時間が8時間の場合は2時間以上、7時間以上の場合は1時間以上の短縮が望ましい水準として示されています。30分だけ短縮する制度は、形式的な要件は満たしても、就業しつつ介護を行うことを実質的に容易にする内容とは言いにくくなります。

出典

※本記事は2026年8月時点の情報に基づいて作成しています。制度の詳細や個別の適用については、所轄の労働局またはお近くの社会保険労務士等の専門家にご確認ください。

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