制度・実務

介護休業中の社会保険料|免除されない理由と徴収の実務

監修 東急ウェルネス株式会社 介護離職防止サポート 責任者 A.T.

介護休業中の社会保険料を計算する人事担当者

育児休業には社会保険料の免除がありますが、介護休業にはありません。ここを取り違えたまま従業員に説明すると、休業が終わってから「請求されると思っていなかった」というやりとりが発生します。給与が支払われない期間でも、健康保険・厚生年金保険の本人負担分と事業主負担分の両方が発生し続けます。本記事では、免除がない根拠、本人負担分をどう集めるか、そして法令が周知を求めている項目までを整理します。

免除されるのは産前産後休業と育児休業だけ

社会保険料が免除されるのは、法令上産前・産後休業育児休業等に限られています※1

産前・産後休業・育児休業等をしている被保険者を使用している事業主が保険者に申し出た場合、被保険者負担分及び事業主負担分ともに保険料が免除されます(健康保険法第159条・第159条の3、厚生年金保険法第81条の2・第81条の2の2)※1

この条文に介護休業は含まれていません。日本年金機構が案内している保険料免除の対象も、産前産後休業期間・育児休業等期間に限られています※2。つまり介護休業は、制度として免除の仕組みが用意されていないということです。

手続きの漏れではないため、届出をすれば免除される、というものでもありません。「申請すれば免除されるはず」と考えて調べ続けてしまうのが、この論点で最も時間を失うパターンです。

何が発生し、何が発生しないか

介護休業中に賃金が支払われない場合、費目によって扱いが分かれます。

1

健康保険料・厚生年金保険料|発生する

免除の対象外のため、本人負担分・事業主負担分ともに発生し続けます。保険料は標準報酬月額をもとに計算されるため、賃金が0円でも金額は変わりません。ここが従業員にとって最も想定外になる点です。

2

介護保険料(40歳以上)|発生する

健康保険に加入する第2号被保険者が負担する介護保険料は、健康保険の保険料と一体的に徴収されます※3。したがって健康保険料と同様に発生し続けます。原則として被保険者と事業主で2分の1ずつ負担します※3

40歳になった月から給与天引きが始まる仕組みと、標準報酬月額ごとの負担額は40歳から引かれる介護保険料|いくら・いつまで払うのかにまとめています。

3

雇用保険料|賃金が支払われなければ発生しない

雇用保険料は支払われた賃金に料率を掛けて計算されるため、賃金の支払いがない月は発生しません。介護休業給付金は賃金ではないため、これに雇用保険料はかかりません。

4

住民税|発生する(前年所得に対するもの)

住民税は前年の所得に対して課されるため、休業中も納付が必要です。特別徴収を続けるか、普通徴収に切り替えるかを決めておく必要があります。給与から引ききれない場合の扱いを、休業に入る前に本人と確認してください。

法令は「支払方法」の周知を求めている

育児・介護休業法施行規則は、事業主があらかじめ定め、周知するよう努力することが求められる事項として、次を挙げています※1

労働者が介護休業期間について負担すべき社会保険料を事業主に支払う方法に関すること※1

この条文の存在自体が、介護休業中に本人負担分が発生することを前提としていることを示しています。免除があるなら「支払う方法」を定める必要はありません。

なお育児休業では、個別周知の義務的な事項として「労働者が育児休業期間について負担すべき社会保険料の取扱い」が定められています※1。介護休業では努力義務としての「支払方法」という形になっており、義務の強さが異なります。努力義務であるぶん、社内で決めないまま運用されている企業が少なくありません。

実務上の注意:介護休業の申出を受けた時点で行う個別周知・意向確認の場で、保険料の話をあわせて伝えるのが最も確実です。周知が義務づけられている項目には介護休業給付金に関することが含まれており、金額の話をする流れが自然にできます。個別周知の進め方は育児・介護休業法改正|介護分野の実務対応チェックリストをご覧ください。

本人負担分を集める3つの方法

給与から控除できないため、別の方法で回収します。どれを採るかを就業規則または社内規程に定めておきます。

毎月徴収 復職後にまとめて控除
やり方 本人に毎月振り込んでもらう 会社が立て替え、復職後の給与から分割控除
本人の負担感 収入がない時期に現金の支出が続く 休業中の支出はないが、復職後の手取りが減る
会社の手間 入金確認が毎月発生する 立替金の管理が必要
回収できない場合 早い段階で気づける 退職されると回収が困難になる
向いている場面 休業が長期にわたる 休業が短く、復職が見込まれている

3つ目として、賞与や未消化の手当から充当する方法もありますが、賃金からの控除には労使協定が必要になる場合があるため、事前に確認が要ります。

実務上の注意:復職後にまとめて控除する方式は、復職しなかった場合に回収できなくなります。介護休業は復職を前提とする制度で、休業後に退職することが決まっている場合は介護休業給付金の対象外ですが、やむを得ず退職に至ることはあり得ます。長期の休業では毎月徴収を基本とし、短期のみ立替とする、といった線引きをしておくと安全です。

そのまま使える従業員への説明例

金額の話は、休業に入る前に必ず済ませてください。あとから請求すると、制度そのものへの不信につながります。

「介護休業中は、会社からの給与は原則として出ませんが、雇用保険から介護休業給付金が支給されます。おおよそ休業前のお給料の67%です。

ひとつお伝えしておきたいのが社会保険料です。育児休業には保険料の免除がありますが、介護休業にはありません。健康保険と厚生年金の保険料は、休業中もこれまでと同じ金額が発生します。

給与からお引きできないので、毎月○日までに指定の口座へお振り込みいただく形になります。金額は月あたり約○円です。

入るお金と出ていくお金の両方をお伝えしておきたかったので、先に申し上げました。ご負担が難しいようでしたら、休業の取り方を含めてご相談ください。分割して取得することもできます。」

給付金の額の計算方法と申請手続きは介護休業給付金の必要書類と支給申請書の記入例|会社の実務で解説しています。

実務でつまずきやすい3点

  • 育児休業と同じだと思い込む。担当者自身が「休業中は免除」と記憶していることがあります。免除は産前産後休業と育児休業等に限られます※1
  • 徴収方法を決めないまま休業に入る。法令は支払方法をあらかじめ定め周知するよう努力を求めています※11件目が発生してから考えると、本人との交渉になります
  • 金額を伝えずに「保険料はかかります」とだけ言う。月あたりいくらかが分からないと、本人は休業の可否を判断できません。概算でよいので数字を出してください

制度全体の位置づけは仕事と介護の両立支援制度の一覧|法定7制度と事業主の義務、規程の整備は就業規則の介護休業規定|規定例と労使協定のチェックでご確認いただけます。

よくあるご質問

介護休業中の社会保険料は免除されますか?

免除されません。健康保険法および厚生年金保険法で保険料が免除されるのは、産前・産後休業と育児休業等をしている被保険者について事業主が保険者に申し出た場合であり、介護休業はこの対象に含まれていません。日本年金機構が案内している保険料免除の対象も、産前産後休業期間と育児休業等期間に限られています。したがって介護休業中は、賃金の支払いがなくても、健康保険料・厚生年金保険料の本人負担分と事業主負担分の両方が発生し続けます。届出をすれば免除されるという性質のものではありません。

給与から控除できない本人負担分は、どうやって集めればよいですか?

毎月本人に振り込んでもらう方法と、会社が立て替えて復職後の給与から分割控除する方法が一般的です。育児・介護休業法施行規則では、労働者が介護休業期間について負担すべき社会保険料を事業主に支払う方法について、あらかじめ定め周知するよう努力することが事業主に求められています。休業が長期にわたる場合は毎月徴収を基本とするほうが安全です。復職後にまとめて控除する方式は、やむを得ず退職に至った場合に回収が困難になります。就業規則または社内規程に方法を定めておいてください。

介護休業中に発生しない費目はありますか?

雇用保険料は、支払われた賃金に料率を掛けて計算されるため、賃金の支払いがない月は発生しません。介護休業給付金は賃金ではないため、これに雇用保険料はかかりません。一方、健康保険料・厚生年金保険料は標準報酬月額をもとに計算されるため、賃金が0円でも金額は変わらず発生します。40歳以上の方の介護保険料は健康保険の保険料と一体的に徴収されるため、同様に発生します。住民税は前年の所得に対して課されるため納付が必要で、特別徴収を続けるか普通徴収に切り替えるかを決めておく必要があります。

休業中の社会保険料はいくらですか?

休業前と同じ額です。健康保険料と厚生年金保険料は標準報酬月額をもとに計算されるため、賃金が0円になっても金額は変わりません。本人負担分・事業主負担分ともに発生し続けます。賃金に対してかかる雇用保険料だけは、賃金が0円であれば発生しません。

出典

※本記事は2026年8月時点の情報に基づいて作成しています。保険料の取扱いや個別の適用については、加入されている健康保険の保険者、年金事務所、またはお近くの社会保険労務士等の専門家にご確認ください。

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