親の介護が始まったら|最初にすべきこと5ステップ
監修 東急ウェルネス株式会社 介護離職防止サポート 責任者 A.T.
親の介護は、多くの場合ある日突然始まります。転倒による骨折、脳卒中での入院、あるいは久しぶりに実家へ帰ったときの違和感——きっかけはさまざまですが、共通しているのは心の準備がないまま始まることです。そして最初の数週間に何をするかで、その後の仕事との両立しやすさが大きく変わります。本記事は従業員向けに、最初にやるべきことを5つのステップにまとめました。そのまま社内配布用の資料としてお使いいただけます。
人事ご担当者様へ:この記事は従業員の方が読むことを想定して書いています。社内報への転載、イントラネットへの掲載、40歳到達時の情報提供資料への同封など、そのままご活用ください。介護に直面してから調べる余裕はほとんどないため、直面する前に届けておくことが最も効果的です。
全体像|最初の1か月でやること
まず順番を頭に入れてください。介護は「何をどの順でやればいいのか」がわからないことが、最初の大きな負担になります。
職場に状況を伝える
できるだけ早く。制度を使うためには会社への申出が必要です。
地域包括支援センターに相談する
介護の総合相談窓口。無料。ここが起点になります。
要介護認定を申請する
介護保険サービスを使うために必要な手続きです。
ケアマネジャーを決める
以降の相談相手になる専門職です。
お金と会社の制度を確認する
費用の見通しと、使える休業・休暇制度を把握します。
最も大切なこと:この段階で「仕事を辞めるかどうか」を決めないでください。介護保険サービスを使える体制が整うまでの期間が、負担が最も重い時期です。その時期の感覚で人生の判断をすると、後悔につながりやすいことがわかっています。判断は、体制が整ってからで間に合います。
ステップ1|職場に状況を伝える
意外に思われるかもしれませんが、これを最初に置いています。理由は明確で、会社の制度は申し出なければ使えないからです。
誰に、何を伝えるか
まずは直属の上司、あるいは人事・総務の担当者に伝えます。伝える内容は次の3点で十分です。
- 家族の介護が必要になったこと(病名や詳しい病状まで話す必要はありません)
- 当面、どのような働き方の配慮が必要になりそうか(急な休み、残業の免除など)
- 使える制度について相談したいこと
2025年4月の法改正により、従業員から介護に直面した旨の申出があった場合、会社は制度の内容を個別に説明し、利用の意向を確認することが義務づけられています。つまり申し出れば、会社から制度の説明を受けられる仕組みになっています。
すでに「辞めるしかない」と考えはじめている場合は、伝える前に親の介護で退職する前に|辞めずに済む制度と判断の順番をご覧ください。判断の順番が変わることがあります。
言い出しにくいと感じる方へ:「迷惑をかける」「評価に響く」と考えて相談をためらう方は多くいます。しかし、黙って一人で抱えたまま業務に支障が出るほうが、結果として周囲への影響は大きくなります。また、介護を理由に不利益な取扱いをすることは法律で禁止されています。早く伝えるほど、使える選択肢は多く残っています。
ステップ2|地域包括支援センターに相談する
ここが介護のすべての起点です。迷ったら、まずここに電話してください。
地域包括支援センターとは
市区町村が設置する介護の総合相談窓口です。保健師・社会福祉士・主任ケアマネジャーなどの専門職が配置されており、相談は無料です。中学校区にひとつ程度の割合で設置されています。何を相談できるのかは地域包括支援センターとは|相談できることと利用の流れで詳しく解説しています。
どこに連絡すればよいか
相談先は介護を受ける本人(親)が住んでいる地域のセンターです。自分の住所地ではありません。「(親の市区町村名) 地域包括支援センター」で検索すると、担当のセンターがわかります。
何を相談できるか
- 介護保険の申請手続きの案内
- 利用できるサービスの説明
- 親の状態に応じた必要な支援の整理
- 費用の目安
- 離れて暮らす場合の対応方法
まだ何も決まっていなくても大丈夫です。「親の様子がおかしいが、何をすればいいかわからない」という段階の相談を、日常的に受け付けている窓口です。事前の準備は不要で、電話1本から始められます。本人が入院中でも、退院前から相談できます。むしろ退院後の生活を整えるには、入院中に動き始めるほうが間に合います。
ステップ3|要介護認定を申請する
介護保険のサービスを使うには、要介護認定を受ける必要があります。申請は親が住む市区町村の窓口、または地域包括支援センターを通じて行います。
申請から結果が出るまでは原則30日程度かかります。認定調査、主治医意見書の作成、審査会という手順を踏むためです。時間がかかるため、必要になりそうだと感じた段階で早めに申請しておくことをおすすめします。
申請の具体的な手順、認定調査で聞かれること、要介護度ごとの目安については要介護認定の流れ|申請から利用開始まで約30日・6ステップで詳しく解説しています。
ステップ4|ケアマネジャーを決める
要介護の認定が出たら、ケアマネジャー(介護支援専門員)を決めます。以降、介護に関する相談の窓口となり、長い付き合いになる専門職です。
ケアマネジャーは、本人の状態と家族の状況を踏まえてケアプラン(介護サービスの利用計画)を作成します。訪問介護を週何回入れるか、デイサービスを使うか、といった具体的な組み立てを一緒に考えてくれる相手です。
仕事をしていることを必ず伝えてください。ケアプランは、家族がどれだけ介護に関われるかを前提に組み立てられます。「平日は仕事があるため対応できない」「遠方に住んでいる」といった事情を最初に共有しておくと、家族の負担を前提としないプランを組んでもらえます。ここを遠慮すると、家族が担う前提のプランになり、後から働き方に無理が生じます。
ケアマネジャーが決まるまでの流れは要介護認定の流れ|申請から利用開始まで約30日・6ステップで詳しく取り上げています。
ステップ5|お金と会社の制度を確認する
会社の制度
法律で定められた主な制度は次のとおりです。就業規則で自社の規定を確認してください。
| 制度 | 内容 | 使いどころ |
|---|---|---|
| 介護休業 | 対象家族1人につき通算93日まで(3回まで分割可) | 退院時の体制づくり、施設探しなど、まとまった時間が必要なとき |
| 介護休暇 | 年5日まで(対象家族が2人以上なら年10日)。時間単位でも取得可 | 通院の付き添い、ケアマネジャーとの面談など短時間の用事 |
| 所定外労働の制限 | 残業の免除を請求できる | 夕方以降の対応が必要なとき |
| 短時間勤務等の措置 | 勤務時間の短縮など(会社が選択した措置による) | 日常的に時間の確保が必要なとき |
介護休業と介護休暇は名前が似ていますが、日数も使い方も給付も異なります。違いは介護休暇と介護休業の違い【比較表】給与・給付金・日数で整理しています。
お金のこと
介護休業中は無給になると思い込んで、退職を選んでしまう方が少なくありません。実際には、一定の要件を満たす場合、雇用保険から介護休業給付金が支給されます。会社からの給与とは別の制度です。手続きは通常、会社を通じて行います。まずは人事担当者に確認してください。
介護保険サービスの自己負担は、原則として費用の1割(所得に応じて2割・3割)です。要介護度ごとに保険が適用される上限額が決まっています。具体的な金額はケアマネジャーが試算してくれます。
やってはいけない3つのこと
介護の初期に多くの方が陥る、避けたい行動です。
避けたいこと 2
全部を自分でやろうとする
介護保険サービスは「使ってよいもの」です。家族が担うのが当然という前提に立つと、必ずどこかで破綻します。プロに任せられる部分は任せてください。
避けたいこと 3
きょうだいや親族に相談しない
気づいたら一人が抱え込んでいた、という状況は珍しくありません。金銭的な分担、帰省の頻度、判断の権限を早い段階で話し合っておくと、後のトラブルを防げます。
覚えておいてほしいこと
相談先は必ずあります
地域包括支援センター、ケアマネジャー、会社の人事窓口。どこも無料で相談できます。一人で判断しないことが、両立を続けるための一番の条件です。
よくあるご質問
親の介護が始まったら、まず何をすればよいですか?
親が住んでいる地域の地域包括支援センターに相談してください。介護の総合相談窓口で、無料で利用できます。要介護認定の申請手続きも案内してもらえます。同時に、職場の上司や人事にも早めに状況を伝えておくことをおすすめします。制度を使えるようにするためには会社への申出が必要だからです。
介護が始まったら、仕事は辞めなければいけませんか?
辞めるかどうかは、いちばん最後に決めて構いません。介護保険サービスを使える体制が整うまでは負担が最も重く、その時期の感覚で判断すると選択肢が戻らなくなるためです。介護休業は自分が介護をするための休みではなく、両立できる体制を整えるための準備期間です。判断の順番と休業中の収入の目安は「親の介護で退職する前に」にまとめています。
遠くに住む親の介護でも、地域包括支援センターに相談できますか?
相談できます。相談先は介護を受ける本人が住んでいる地域のセンターです。離れて暮らす家族からの電話相談も受け付けています。まずは親の住所地の市区町村のホームページで、担当のセンターを調べてください。
出典
※本記事は2026年8月時点の情報に基づいて作成しています。介護保険サービスの内容や自己負担額は、お住まいの市区町村や個々の状況により異なります。詳細はお住まいの地域包括支援センターにご確認ください。
従業員の方お一人おひとりに
介護に関する個別相談会・常設相談窓口
制度の一般的な説明だけでは、個々のご家庭の状況に対する答えは出ません。東急ウェルネスでは、ケアマネジャー等の有資格者が従業員の方の状況を伺い、何から手をつけるべきかを一緒に整理する個別相談会と、いつでも相談できる常設窓口をご提供しています。人事ご担当者様が介護の専門的な質問に答える必要がなくなります。