要介護認定の流れと期間|6ステップ、認定まで平均約40日
監修 東急ウェルネス株式会社 介護離職防止サポート 責任者 A.T.
介護離職の理由として、「介護保険サービス等が利用できなかった・利用方法がわからなかった」が30.2%を占めています※1。制度そのものより、使い方がわからないことが離職につながっているということです。介護保険サービスを使うには要介護認定という手続きが必要で、申請から結果が出るまで、法律では原則30日以内とされていますが、実際には全国の平均で約40日かかっています※5。本記事では申請から利用開始までの流れを6つのステップで整理します。人事ご担当者様の基礎知識としても、従業員向けの説明資料としてもお使いいただけます。
全体の流れ|利用開始まで6ステップ
介護保険サービスは、申し込めばすぐ使えるものではありません。次の手順を踏みます。
申請する
市区町村の窓口、または地域包括支援センターへ。
認定調査を受ける
調査員が自宅や病院を訪問し、心身の状況を確認します。
主治医意見書が作成される
市区町村が主治医に依頼します。本人の手続きは不要です。
審査判定が行われる
コンピュータによる一次判定のあと、介護認定審査会が二次判定を行います。
認定結果が通知される
申請から原則30日以内(全国の平均は約40日)。要支援1・2、要介護1〜5、非該当のいずれかです。
ケアプランを作成しサービス開始
ケアマネジャー等が利用計画を作成します。
時間がかかることが最大の落とし穴です。親が入院し、退院後の生活に不安があると気づいてから申請しても、サービスが始まるまでにひと月以上かかります。この空白期間を家族が休みを取って埋めようとして、仕事に無理が生じるパターンが典型的です。必要になりそうだと感じた段階で、退院前から申請しておくことが両立の鍵になります。
そもそも誰が使えるのか
介護保険の被保険者は年齢で2つに分かれ、利用できる条件が異なります。
| 第2号被保険者(40〜64歳) | 第1号被保険者(65歳以上) | |
|---|---|---|
| 利用できる条件 | 加齢に起因する特定疾病が原因の場合に限る | 原因を問わず、介護が必要と認定されれば利用できる |
| 該当する例 | 末期がん、若年性認知症、脳血管疾患、関節リウマチ など | 制限なし |
| 保険料 | 健康保険料とあわせて徴収される | 原則として年金から徴収される |
人事の実務との接点:40歳になると介護保険料の負担が始まります。2025年4月施行の法改正で40歳到達時の情報提供が義務づけられたのは、この時期が介護を意識する自然なタイミングだからです。詳しくは40歳到達時の介護情報提供義務とは?何を・いつ・どう配ればよいかをご覧ください。
なお、従業員本人が第2号被保険者として介護保険を使う立場になる場合もあります。若年性認知症や末期がんのケースがこれにあたります。
ステップ1|申請する
どこに申請するか
介護を受ける本人が住民票を置いている市区町村の介護保険担当窓口です。地域包括支援センターでも受け付けており※3、そちらのほうが相談しながら進められます。
必要なもの
- 要介護・要支援認定申請書(窓口またはホームページで入手)
- 介護保険被保険者証(65歳以上の方に交付されています)
- 医療保険の加入がわかるもの(40〜64歳の方の場合。「資格確認書」や「資格情報のお知らせ」など。市区町村によって違います)※6
- 主治医の氏名・医療機関名・連絡先がわかるもの
- マイナンバーがわかるもの、本人確認書類
本人が窓口に行けなくても申請できます。家族による代理申請のほか、地域包括支援センターや居宅介護支援事業所による申請の代行も認められています。入院中でも申請可能です。遠方に住んでいて窓口に行けない場合は、郵送での申請を受け付けている市区町村もあるため、事前に電話で確認してください。
ステップ2|認定調査を受ける
申請後、市区町村の職員または委託を受けた調査員が、自宅や入院先を訪問します。全国共通の調査票に沿って、本人の心身の状況を確認する調査です。
確認される内容
- 身体機能・起居動作(寝返り、起き上がり、歩行、立ち上がりなど)
- 生活機能(食事、排泄、入浴、着替えなど)
- 認知機能(意思の伝達、短期記憶、生年月日を言えるかなど)
- 精神・行動障害(物を盗られたと言う、昼夜逆転などの有無)
- 社会生活への適応(買い物、金銭管理、服薬など)
- 受けている医療の状況
ここが認定結果を左右する重要な場面です。調査当日、本人が普段よりしっかり受け答えしてしまい、実際より軽い判定になることが頻繁に起こります。他人の前では気が張るためで、本人に悪気はありません。家族が必ず立ち会い、普段の様子を補足してください。「夜中に何度も起きる」「服薬を忘れる」「先週転倒した」など、困っている場面を事前にメモにまとめて調査員に渡すのが確実です。聞かれる74項目と答えの選ばれ方、回数で書くメモの例は介護認定調査とは|聞かれる74項目と、働く家族の立ち会い方で解説しています。
ステップ3|主治医意見書
市区町村が主治医に依頼し、心身の状況についての意見書を作成してもらいます。本人や家族が手続きをする必要はありませんが、申請時に主治医の情報を正確に伝えておく必要があります。
かかりつけ医がいない場合は、市区町村が指定する医師の診察を受けることになります。日頃から受診している医療機関があるほうが手続きは早く進みます。
ステップ4・5|審査判定と、認定が出るまでの期間
介護認定が出るまでの期間|原則30日、全国の平均は約40日
申請から認定結果が通知されるまでの期間は、原則30日以内とされています※2。ただし主治医意見書の作成や認定調査の日程調整に時間がかかる場合など、30日を超えることがあります。その場合は、処理に要する見込み期間と理由を記した通知が市区町村から届きます。
厚生労働省の公表では、2024年度(2024年4月〜2025年3月)に申請された分の申請から認定までの全国の平均は39.9日で、30日以内に認定されたのは22.8%でした※5。東京都は平均40.9日、神奈川県は41.3日です。段階ごとの平均は、認定調査(市区町村が依頼してから調査の日まで)が11.1日、主治医意見書(依頼してから届くまで)が17.9日、介護認定審査会など(両方がそろってから判定まで)が16.8日で、いちばん日数がかかるのは主治医意見書です。申請することを主治医に先に伝え、ふだん診てもらっている医師を申請書に書くと、意見書がそろいやすくなります。
介護保険の手続きでは、この待ち期間がそのまま従業員がひとりで介護を抱える期間になります。認定を待たずにサービスを利用できる仕組みもあるため、待つあいだに何ができるかを知っておくことが要点です。
二段階で判定される
まず認定調査の結果をもとにコンピュータが判定を行い(一次判定)、次に保健・医療・福祉の専門家で構成される介護認定審査会が、主治医意見書などを踏まえて最終的な判定を行います(二次判定)。
認定結果の区分
結果は要支援1・2、要介護1〜5、非該当のいずれかで通知されます。数字が大きいほど必要な介護の度合いが重いことを表します。区分によって、介護保険が適用される月あたりの上限額(要介護1なら16,765単位)と、利用できるサービスの種類が変わります※4。
| 区分 | おおまかな状態像 | ケアプランの作成者 |
|---|---|---|
| 要支援1・2 | 日常生活はおおむね自分でできるが、一部に支援が必要。状態の悪化を防ぐことが目的 | 地域包括支援センター |
| 要介護1〜5 | 日常生活に継続的な介護が必要。数字が大きいほど必要な介護は重い | 居宅介護支援事業所のケアマネジャー |
| 非該当 | 介護保険サービスの対象外。市区町村の総合事業を利用できる場合がある | 地域包括支援センターに相談 |
結果に納得できない場合:認定には有効期間があり、新規の認定は原則6か月、更新は原則12か月です(状態により期間は変わります)。有効期間の途中でも、心身の状態が変化した場合は区分変更申請ができます。また、認定結果そのものに不服がある場合は、都道府県の介護保険審査会に審査請求を行う制度もあります。まずはケアマネジャーか地域包括支援センターにご相談ください。
ステップ6|ケアプランを作りサービスを開始する
認定が出たら、ケアマネジャー(要支援の場合は地域包括支援センター)がケアプランを作成します。訪問介護を週何回入れるか、デイサービスを利用するか、福祉用具を借りるかといった具体的な組み立てです。ケアプランの作成費用に自己負担はありません。
サービス利用時の自己負担は原則1割(所得に応じて2割・3割)です。区分ごとの上限額を超えて利用した分は全額自己負担になります。
認定結果を待たずに始める方法があります。「結果が出るまで待てない」という場合、暫定ケアプランを作成して申請日からサービスを利用できます。認定結果が出た後に給付が遡って適用される仕組みです。ただし想定より軽い区分で認定されると、上限を超えた分が自己負担になる可能性があります。利用を急ぐ場合は、この仕組みも含めてケアマネジャーにご相談ください。
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働きながら進めるとき|家族の手が要る場面と使える休み
申請から利用開始までのひと月あまりに、家族が立ち会いたい場面は数回あります。どれも半日以内で済むことが多く、介護休暇を時間単位で使えば、仕事を大きく休まずに進められます。
| 場面 | 家族がすること | 使える休み・工夫 |
|---|---|---|
| 申請 | 地域包括支援センターに相談し、申請を代わりに出してもらう | 窓口に行かずに済むことが多い |
| 認定調査 | 調査に立ち会い、普段の様子を伝える(1時間程度) | 介護休暇(時間単位) |
| 主治医の受診 | かかりつけ医がいなければ受診に付き添う | 介護休暇・年次有給休暇 |
| ケアマネジャーとの契約 | 自宅で契約し、ケアプランを打ち合わせる | 介護休暇(時間単位) |
| 退院前の打ち合わせ | 入院中なら、病院で退院後の生活を話し合う | 介護休暇。準備が続くなら介護休業 |
退院が迫っていて、住まいの準備やサービスの手配がまとまって必要な場合は、介護休業(同じ家族について通算93日・3回まで)を検討します。休みの使い分けは介護休暇と介護休業の違い【比較表】給与・給付金・日数で、会社への伝え方は親の介護で仕事を休むときの伝え方|上司への例文と使える休みで解説しています。
人事担当者が押さえておくべき2点
制度の詳細をすべて覚える必要はありません。人事の実務として重要なのは次の2点です。
ポイント 1
介護休業を勧めるタイミングがわかる
申請から利用開始まで1か月以上かかり、その間に認定調査への立ち会い、ケアマネジャーとの面談、サービス事業所の見学などが集中します。介護休業はまさにこの時期のためにある制度です。従業員から相談を受けたら、この期間の存在を伝えてください。
ポイント 2
「体制が整えば働き続けられる」と伝えられる
介護が始まった直後は、本人が「これがずっと続く」と感じて退職を考えます。しかしサービスが動き出せば負担は変わります。今が一番大変な時期であり、この状態が続くわけではないと伝えられるかどうかが、離職を防ぐ分かれ目になります。
ただし、人事が介護の専門的な判断まで担う必要はありません。要介護度の見立てやサービスの選択は、ケアマネジャーなどの専門職の領域です。人事の役割は「専門家につなぐこと」と「会社の制度を使えるようにすること」の2つに絞るのが現実的です。専門的な質問への回答まで人事が抱え込むと、対応の負荷が高くなりすぎて窓口自体が続きません。
よくあるご質問
要介護認定の申請から結果が出るまで、どのくらいかかりますか?
法律では、申請から原則30日以内に結果を通知することになっています。ただし実際には、2024年度に申請された分の全国の平均は39.9日で、30日以内に認定されたのは22.8%でした(厚生労働省の公表)。主治医意見書の作成や認定調査の日程調整に時間がかかるためです。認定結果を待たずにサービスを利用できる仕組み(暫定ケアプラン)もあるため、急ぐ場合はケアマネジャーや地域包括支援センターにご相談ください。
40代・50代の従業員本人も介護保険を使えますか?
40歳から64歳の方は介護保険の第2号被保険者にあたり、加齢に起因する特定疾病が原因で介護が必要になった場合に限り、介護保険サービスを利用できます。末期がんや若年性認知症などが特定疾病に含まれます。65歳以上の第1号被保険者は原因を問わず利用できます。
認定調査に家族が立ち会ったほうがよいですか?
立ち会いを強くおすすめします。調査当日は本人が普段よりしっかり受け答えしてしまい、実際の状態より軽く判定されることがあるためです。家族が普段の様子や困っている場面を補足して伝えることで、実態に近い認定結果につながります。事前に困りごとをメモにまとめておくと確実です。当日の流れとメモの書き方は、介護認定調査とは|聞かれる74項目と、働く家族の立ち会い方で解説しています。
要介護認定を受けると、お金はもらえますか?
介護保険から現金が支給されるわけではありません。認定された区分ごとに、1か月に介護保険で利用できるサービスの上限(区分支給限度基準額)が決まり、その範囲で利用したサービス費用の1割(所得により2割・3割)を自己負担します。たとえば要介護1の上限は16,765単位で、1単位を10円とすると月に約16.8万円分のサービスに介護保険が使えます。
要介護認定の申請に費用はかかりますか?
かかりません。申請、認定調査、主治医意見書の作成のいずれも、本人や家族が費用を払う必要はありません。費用がかかるのは、認定のあとに介護保険サービスを利用したときの自己負担です。
入院中でも要介護認定の申請はできますか?
できます。認定調査は入院先の病院で受けられます。退院後の生活に介護が必要になりそうなら、病院の医療ソーシャルワーカーや地域包括支援センターに相談して、退院前に申請しておくと、サービスの開始が遅れにくくなります。ただし病状が落ち着いていない時期は、調査の時期を調整することがあります。
出典
- ※1 厚生労働省「令和3年度 仕事と介護の両立等に関する実態把握のための調査研究事業報告書」(離職理由「介護保険サービス等が利用できなかった・利用方法がわからなかった」30.2%)
- ※2 厚生労働省「介護・高齢者福祉」(要介護認定の申請から認定結果の通知までは原則30日以内)
- ※3 厚生労働省「地域包括ケアシステム」
- ※4 厚生労働省「居宅介護サービス費等区分支給限度基準額及び介護予防サービス費等区分支給限度基準額」(告示第33号)
- ※5 厚生労働省「認定審査期間等の公表」(令和6年度分=2024年4月〜2025年3月の申請。申請から認定までの平均日数・段階ごとの平均日数・30日以内に認定された割合)
- ※6 e-Gov法令検索「介護保険法施行規則」第35条第2項(第2号被保険者の医療保険の加入の確認)、厚生労働省「医療機関・薬局では、マイナ保険証か資格確認書をご提示ください」(従来の健康保険証は2025年12月1日で有効期限が終了)
※本記事は2026年10月時点の情報に基づいて作成しています。申請の手順・必要書類・自己負担額は、お住まいの市区町村や個々の状況により異なります。詳細はお住まいの市区町村の介護保険担当窓口または地域包括支援センターにご確認ください。
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