離職防止

部下から介護の相談を受けたら|管理職がとるべき初動対応

監修 東急ウェルネス株式会社 介護離職防止サポート 責任者 A.T.

部下から介護の相談を受ける管理職のイメージ

介護は予兆なく突発的に始まることが多く、相談を受けてから離職に至るまでの時間が限られているケースも少なくありません。つまり、部下から最初に相談を受けたときの対応が、その後を大きく左右します。本記事では、管理職が相談を受けた際にとるべき初動対応を、避けるべき言動とあわせて具体的に解説します。管理職研修の資料としてもご活用ください。

なぜ初動が重要なのか

介護は育児と違い、突発的に始まることが多いと言われています。脳卒中や転倒による骨折、認知症の進行など、多くの場合は予告なく訪れます。従業員本人も準備ができておらず、「どうすればいいかわからない」まま判断を迫られる状況に置かれます。

このとき、上司の一言が「相談してよかった」となるか「やはり辞めるしかない」となるかを分けます。実際、離職理由として最も多いのは介護そのものの負担ではなく、「勤務先の両立支援制度の問題や介護休業等を取得しづらい雰囲気等があった」(43.4%)という職場環境の問題です。

押さえておきたい前提:管理職が介護の専門知識を持つ必要はありません。求められるのは、話を受け止め、適切な窓口へつなぐことです。「自分が解決しなければ」と抱え込む必要はありません。

相談を受けたときの4ステップ

1

まず落ち着いて話を聞く

解決策の提示は後回しで構いません。まずは状況を聞くことに徹します。「話してくれてありがとう」と伝えるだけでも、本人の心理的負担は大きく変わります。人目のある場所は避け、落ち着いて話せる場を設けてください。

2

状況を確認する

誰を介護するのか、状態はどの程度か、同居か遠距離か、ほかに介護を担える家族がいるか、要介護認定を受けているか。これらによって取るべき対応が変わります。詮索にならないよう、「支援を考えるために伺いたい」と前置きするとよいでしょう。

3

制度があることを伝える

介護休業・介護休暇・短時間勤務など、利用できる制度があることを伝えます。詳細を正確に説明できなくても構いません。「制度がある」「調べて連絡する」と伝えるだけで十分です。

4

人事・相談窓口へつなぐ

本人の同意を得たうえで、人事部門や社内の介護相談窓口へつなぎます。管理職の役割はここまでです。専門的な助言は窓口に委ねてください。

やってはいけない対応

NG 1

その場で退職を受理する

介護開始直後は冷静な判断が難しい時期です。「まず制度を確認してから考えましょう」と、判断を保留するよう促してください。

NG 2

本人の同意なく周囲へ共有する

家族の病状は極めてセンシティブな個人情報です。誰にどこまで伝えてよいか、必ず本人に確認してください。

NG 3

自分の介護経験を長く語る

共感を示すのは有効ですが、「自分のときはこうだった」が長くなると、本人が話しづらくなります。介護の状況は一人ひとり異なります。

NG 4

その場しのぎの約束をする

「何とかするから大丈夫」といった曖昧な約束は、後で実現できないと信頼を損ないます。確認して回答する姿勢が誠実です。

かけるべき言葉・避けるべき言葉

かけるとよい言葉

  • 「話してくれてありがとう」
  • 「今どんな状況か、差し支えない範囲で教えてもらえますか」
  • 「使える制度があるので、確認して改めてお伝えします」
  • 「一人で抱え込まないでください」
  • 「仕事の分担は一緒に考えましょう」

避けたい言葉

  • 「大変だね、で、仕事はどうするの?」(責められているように聞こえます)
  • 「みんな同じような苦労をしているよ」(相談を打ち切る効果があります)
  • 「無理なら仕方ないね」(退職を促していると受け取られます)
  • 「施設に入れればいいんじゃない?」(安易な助言は反発を招きます)

特に注意:「遠慮しないで休みなよ、一人いなくても回るから」は一見やさしい言葉ですが、状況によっては「自分は必要ないんだ」と突き放されたように受け取られてしまう可能性があります。「無理せず、働き続けられる方法を一緒に考えよう」まで言い切ることが大切です。

相談の前に気づく|介護の兆候

多くの従業員は、限界に達するまで相談しません。次のような変化が見られたら、介護が始まっている可能性があります。

  • 急な半休・遅刻・早退が増えた
  • 有給休暇の取得が不規則に増えた
  • 残業や出張を避けるようになった
  • 勤務中に頻繁に私用電話を受けている
  • 疲労が目立ち、集中力が落ちている

こうした変化に気づいたら、「最近忙しそうだけど、何か困っていることはありますか」と、介護と決めつけない形で声をかけてみてください。相談のきっかけになります。

管理職向けチェックリスト

相談を受けた後、対応に漏れがないか確認してください。

よくあるご質問

部下から介護の相談を受けたとき、まず何をすべきですか?

解決策を提示するより先に、状況を聞くことに徹してください。誰を・どの程度・どこで介護するのかによって取るべき対応が変わります。その場で結論を出さず、人事や専門の相談窓口につなぐことが最も確実です。

「退職を考えている」と言われた場合はどうすればよいですか?

その場で退職の意思を確定させないことが重要です。介護開始直後は先が見えず、冷静な判断が難しい時期です。まず介護休業や介護休暇などの制度があること、介護サービスの利用で両立できる可能性があることを伝え、退職を急がずに選択肢を整理する時間を持つよう促しましょう。

本人が周囲に知られたくないと言っている場合は?

本人の意向を尊重し、共有範囲を必ず確認してください。ただし制度利用には人事部門との連携が不可欠なため、「人事には手続きのために伝える必要がある」ことを説明し、同意を得たうえで進めます。

出典

※本記事は2026年8月時点の情報に基づいて作成しています。記載の統計数値は各種調査に基づく概数です。制度の詳細や個別の適用については、所轄の労働局または社会保険労務士等の専門家にご確認ください。

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