介護用語集|人事担当者が押さえる58語
監修 東急ウェルネス株式会社 介護離職防止サポート 責任者 A.T.
従業員から介護の相談を受けると、聞き慣れない言葉が次々に出てきます。「ケアマネさんに言われて」「区分変更を出した」「暫定でお願いした」。意味が取れないと、制度の適用判断も、いつまで何が必要かの見通しも立ちません。本記事は、人事担当者がその場で意味を確認するための用語集です。制度・介護保険・専門職と機関・サービス名・現場の言い方の5つに分け、正式名称と通称を対応づけてまとめました。
制度の用語|育児・介護休業法
従業員から制度の申出を受けたときに出てくる言葉です。詳細は各記事で解説しています。
- 介護休業:対象家族1人につき通算93日まで、3回を上限に分割して取得できる休業※1。介護の体制を整えるためのまとまった休業として位置づけられています
- 介護休暇:年5日(対象家族が2人以上の場合は年10日)。通院の付き添いや介護保険の手続きなど、日常的なニーズにスポット的に対応するための休暇※1。介護休業との違いは別記事で比較しています
- 介護両立支援制度等:法令上の用語で、介護休暇・所定外労働の制限・時間外労働の制限・深夜業の制限・所定労働時間の短縮等の措置の5つを指します※1。介護休業は含まれません
- 所定外労働の制限:いわゆる残業免除。請求があれば、事業の正常な運営を妨げる場合を除き所定労働時間を超えて働かせることができません※1
- 時間外労働の制限:1か月24時間・1年150時間を超える時間外労働をさせられなくなる制度※1。残業免除とは別の制度です
- 深夜業の制限:請求があれば深夜に労働させられなくなる制度※1。請求の単位は1か月以上6か月以内で、他の制限より短くなっています
- 所定労働時間の短縮等の措置:短時間勤務・フレックスタイム制・時差出勤・介護サービス費用の助成のいずれかを、対象家族1人につき3年間以上・2回以上利用できる形で講じる義務※1。介護の短時間勤務で詳しく解説しています
- 対象家族:介護休業などの対象となる家族の範囲。「要介護状態にある対象家族」という形で条文に出てきます※1
- 要介護状態:育児・介護休業法における要介護状態は、介護保険の要介護度とは別の基準です※1。要介護認定を待たなくても制度は使えます
- 介護休業給付金:雇用保険から支給される給付。原則として休業開始時賃金日額×支給日数×67%。申請手続きは事業主が行います。申請手続きと必要書類を参照してください
- 個別周知・意向確認:介護に直面した旨の申出があったとき、介護休業と介護両立支援制度等を個別に周知し、利用の意向を確認する義務(2025年4月〜)※1
- 雇用環境の整備:研修の実施・相談体制の整備・利用事例の収集提供・方針の周知の4つのうち、いずれか1つ以上を講じる義務(2025年4月〜)※1
- ケアハラスメント(ケアハラ):介護休業など両立支援制度の利用に関する言動により就業環境が害されること。事業主には防止措置が義務づけられています。具体的な言動例は別記事に
- 不利益取扱いの禁止:制度の申出や利用を理由とする解雇その他の不利益な取扱いの禁止※1。本人を思っての配慮でも、意向を確認しないまま担当を外せば該当し得ます
制度の全体像は仕事と介護の両立支援制度の一覧にまとめています。
介護保険の用語
従業員が「認定が出た」「限度額を超える」と言うときの前提になる仕組みです。
- 第1号被保険者:65歳以上の方。原因を問わず、要介護(要支援)認定を受ければ介護保険サービスを利用できます※2
- 第2号被保険者:40歳以上65歳未満の方。特定疾病が原因で介護が必要になった場合に限り利用できます※2。従業員本人が該当することがあります
- 特定疾病:第2号被保険者が介護保険を使える16の疾病※2。がん(回復の見込みがない状態に至ったと判断されたものに限る)、関節リウマチ、筋萎縮性側索硬化症、後縦靱帯骨化症、骨折を伴う骨粗鬆症、初老期における認知症、進行性核上性麻痺・大脳皮質基底核変性症およびパーキンソン病、脊髄小脳変性症、脊柱管狭窄症、早老症、多系統萎縮症、糖尿病性神経障害・糖尿病性腎症および糖尿病性網膜症、脳血管疾患、閉塞性動脈硬化症、慢性閉塞性肺疾患、両側の膝関節または股関節に著しい変形を伴う変形性関節症
- 要介護認定:介護保険サービスを利用するために必要な認定。市区町村の窓口で申請します※2。申請から利用開始までの流れを参照してください
- 認定調査:市区町村の職員などの認定調査員が自宅を訪問し、心身の状況について聞き取りを行う調査※2。調査の内容は全国共通です
- 主治医意見書:市区町村が直接、主治医(かかりつけ医)に依頼して作成してもらう、心身の状況についての医学的な意見書※2
- 介護認定審査会:認定調査の結果と主治医意見書をもとに要介護度を判定する、保健・医療・福祉の学識経験者による会議※2
- 要支援1・2/要介護1〜5/非該当:認定結果の区分※2。数字が大きいほど必要な介護の度合いが重くなります
- 区分支給限度基準額:区分ごとに定められた、介護保険が適用される1か月あたりの上限額。これを超えて使った分は全額自己負担になります
- 介護保険被保険者証:認定結果などが記載された証明書。サービス利用時に事業者へ提示します※2
- 介護保険負担割合証:自己負担の割合が記載された証明書。被保険者証とあわせて事業者へ提示します※2
- 自己負担割合:ケアプランに基づいた利用者負担は費用の1〜3割※2。65歳以上は合計所得金額160万円以上で原則2割、220万円以上で原則3割。第2号被保険者は所得にかかわらず1割です※2
- ケアプラン(居宅サービス計画):どのサービスをいつ利用するかを定めた計画※2。要支援の方の場合は介護予防サービス計画(介護予防ケアプラン)と呼びます
- 暫定ケアプラン:認定結果が出る前に、見込みの区分でサービスを利用開始するためのケアプラン。認定を待たずに動きたいときに使われます
- 区分変更申請:有効期間の途中でも、心身の状態が変化した場合に区分の見直しを求める申請
人と機関の用語
従業員が「誰に何を頼めるのか」を整理するための言葉です。
- ケアマネジャー(介護支援専門員):ケアプランを作成し、サービス事業者との連絡調整を行う専門職※2。役割と依頼の仕方は別記事で解説しています
- 地域包括支援センター:市区町村や市区町村が委託する組織により公的に運営される、高齢者の総合相談窓口※2。相談・支援は無料。相談できることと利用の流れを参照してください
- 居宅介護支援事業者:ケアマネジャーが所属し、在宅でサービスを利用する方と契約してケアプランを作成する事業者※2。利用者が自分で選べます
- 主任ケアマネジャー:地域包括支援センターに配置されている専門職のひとつ※2
- 保健師・社会福祉士:主任ケアマネジャーとともに地域包括支援センターに配置されている専門職※2。相談の入口を選ばなくてよいのはこの体制があるためです
- サービス担当者会議:ケアプランの作成・見直しにあたって、本人・家族・ケアマネジャー・サービス事業者が集まる会議。平日の日中に設定されることが多く、ここに出られるかが両立の分かれ目になります
- 介護サービス情報公表システム:厚生労働省が運営する検索サイト。地域包括支援センターと介護サービス事業所を検索できます※2
サービスの正式名称
通称で語られることが多いため、書類上の名称と結びつきにくい言葉です。かっこ内が通称にあたります※3。
- 居宅介護支援:ケアプランの作成と連絡調整。利用者の自己負担はありません
- 訪問介護(ホームヘルプ):自宅に訪問して行う身体介護・生活援助
- 訪問看護:看護師などが自宅を訪問して行う療養上の世話や診療の補助
- 訪問リハビリテーション:自宅で受けるリハビリテーション
- 夜間対応型訪問介護:夜間に定期巡回や随時の対応を行う訪問介護
- 定期巡回・随時対応型訪問介護看護:日中・夜間を通じて、定期巡回と随時の対応を組み合わせるサービス
- 通所介護(デイサービス):施設に通って受ける入浴・食事・機能訓練など
- 通所リハビリテーション:施設に通って受けるリハビリテーション
- 短期入所生活介護(ショートステイ):短期間の宿泊を伴うサービス。家族の休息や出張時に使われます
- 小規模多機能型居宅介護:訪問・通い・宿泊を組み合わせて利用できるサービス
- 福祉用具貸与:車いすや介護ベッドなどのレンタル
- 特定施設入居者生活介護:有料老人ホームなどで受ける介護サービス
- 認知症対応型共同生活介護(グループホーム):認知症の方が少人数で共同生活を送る住まい
- 介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム):常時介護が必要な方が生活する施設
- 介護老人保健施設:在宅復帰を目指してリハビリテーションを受ける施設
- 介護医療院:長期的な医療と介護を一体的に受ける施設
押さえておきたい考え方:人事担当者がサービスの中身まで覚える必要はありません。「その名称が介護保険のサービスである」と分かれば十分です。組み合わせを設計するのはケアマネジャーの仕事で、会社の役割は、そのために従業員が動ける時間を確保することにあります。
現場でよく使われる言い方
法令用語ではありませんが、相談や報道で頻繁に出てくる言葉です。
- 隠れ介護:介護をしているにもかかわらず、その事実を勤務先に伝えていない状態を指す言い方。社内アンケートでの可視化を参照してください
- ビジネスケアラー:働きながら家族等の介護に従事する人。経済産業省の推計では2030年に約318万人。定義と規模は別記事で解説しています
- ワーキングケアラー:ビジネスケアラーとほぼ同義。行政や経営向けの資料では「ビジネスケアラー」が使われることが多くなります
- ケアラー:家族などの心身の状況に対して無償で世話や支援を行う人の総称。就労の有無を問いません
- ヤングケアラー:本来大人が担うと想定されている家事や家族の世話などを日常的に行っているこども・若者※4。若手社員が該当する場合があります
- ダブルケア:子育てと介護を同時に担っている状態
- 遠距離介護:離れて暮らす家族の介護。移動時間が負担の中心になり、テレワークや時差出勤が効きやすい形です
- 老老介護:高齢の家族が高齢の家族を介護している状態。従業員の親同士がこの状態にあることがあります
- レスパイト:介護をしている家族が一時的に介護から離れて休息すること。ショートステイなどが使われます
用語の意味が分かったうえで、実際に何をするかは介護離職を防ぐには|企業がとるべき対策を体系的に解説にまとめています。
よくあるご質問
人事担当者は介護の用語をどこまで覚える必要がありますか?
すべてを覚える必要はありません。制度の用語(介護休業・介護休暇・介護両立支援制度等・要介護状態・介護休業給付金)は、適用判断に直結するため押さえておく必要があります。一方、介護サービスの名称や中身については「それが介護保険のサービスである」と分かれば十分です。サービスの組み合わせを設計するのはケアマネジャーの役割であり、会社の役割は従業員がその調整に動ける時間を確保することにあります。相談の場で意味が取れないときに、この用語集で確認する使い方をおすすめします。
育児・介護休業法の「要介護状態」と、介護保険の「要介護度」は同じものですか?
別のものです。育児・介護休業法における要介護状態は、介護保険の要介護度とは別の基準で判断されます。つまり、要介護認定を受けていない段階でも、介護休業や介護休暇などの制度は利用できます。この点を取り違えて「認定が出てから申し出てください」と案内してしまうと、最も支援が必要な時期に制度が使えないことになります。認定結果が出るまでは原則30日程度かかるため、実務上の影響が大きい誤りです。
従業員が「特定疾病」と言っていましたが、これは何ですか?
40歳以上65歳未満の第2号被保険者が介護保険サービスを利用できる、16の疾病を指します。がん(回復の見込みがない状態に至ったと判断されたものに限る)、脳血管疾患、初老期における認知症、パーキンソン病、関節リウマチ、筋萎縮性側索硬化症などが含まれます。65歳以上の第1号被保険者は原因を問わず利用できますが、第2号被保険者はこの16疾病が原因である場合に限られます。従業員本人が該当することもあるため、40代・50代の従業員からの相談でも介護保険が使える場合がある点は押さえておいてください。
出典
- ※1 厚生労働省「育児・介護休業法のあらまし(令和7年4月1日、10月1日施行対応)」
- ※2 同上(参考)介護保険制度・地域包括支援センターについて
- ※3 厚生労働省「介護サービス情報公表システム|公表されている介護サービスについて」
- ※4 こども家庭庁「ヤングケアラーについて」
※本記事は2026年8月時点の情報に基づいて作成しています。介護保険サービスの内容や自己負担額は、お住まいの市区町村や個々の状況により異なります。制度の詳細や個別の適用については、所轄の労働局、お住まいの地域包括支援センター、または社会保険労務士等の専門家にご確認ください。
用語が分かっても、判断は別です
介護に関する常設相談窓口・個別相談会
用語の意味が分かっても、「この状況で何を提案すべきか」は個別の判断になります。東急ウェルネスでは、ケアマネジャーが従業員の皆さまの相談に直接お応えする常設窓口と、企業を訪問して行う個別相談会をご提供しています。人事のご担当者様からの、対応の進め方に関するご相談にも応じています。