制度・実務

両立支援等助成金「介護離職防止支援コース」|要件と申請

監修 東急ウェルネス株式会社 介護離職防止サポート 責任者 A.T.

両立支援等助成金の申請を検討するイメージ

仕事と介護の両立支援に取り組む中小企業を対象に、国が費用を助成する制度があります。それが両立支援等助成金の「介護離職防止支援コース」です。従業員が介護休業を取得して職場復帰した場合に40万円、2026(令和8)年度からは介護休暇の有給化に対して30万円が新設されました。本記事では2026年度の支給額と要件、申請の流れ、そして取りこぼしが起きやすい実務上の注意点を整理します。

先に最も重要な注意点をお伝えします。この助成金は従業員が介護休業に入ってから慌てて準備しても間に合わない設計になっています。支給要件に「方針の社内周知」と「両立支援プランの作成」が含まれ、プランは原則として休業開始前に作成する必要があるためです。申出を受ける前に準備を終えておくことが受給の前提になります。

制度の概要|対象は中小企業事業主

両立支援等助成金は、仕事と育児・介護等の両立支援に取り組む事業主を支援する厚生労働省の助成金です。2026(令和8)年度は6つのコースが設けられており、そのうち「2 介護離職防止支援コース」が介護分野を対象としています※1

厚生労働省の案内では、このコースは労働者の円滑な介護休業の取得・職場復帰に取り組み、労働者が介護休業を取得した場合や、介護両立支援制度を利用した場合、介護休暇制度を有給化し労働者が利用した場合などに受給できる助成金と説明されています※1。対象は中小企業事業主です※2

この助成金の設計思想:制度を作っただけでは支給されません。「制度を整えたうえで、実際に従業員が使った」ことが要件になっています。つまり助成金の受給を目指すプロセスそのものが、介護離職防止の実践になる仕組みです。制度が形骸化しやすい領域だからこそ、こうした設計になっていると考えられます。

2026年度の支給額一覧

2026(令和8)年度の支給額は次のとおりです※1

類型 要件 支給額
①介護休業 対象労働者が介護休業を取得&職場復帰 40万円
②介護両立支援制度 A 制度を1つ導入&対象労働者が当該制度を利用 20万円
②介護両立支援制度 B 制度を2つ以上導入&対象労働者が当該制度を1つ以上利用 25万円
③業務代替支援(1)新規雇用 介護休業取得者の業務代替要員を新規雇用または派遣で受入 20万円
③業務代替支援(2)手当支給等A 介護休業取得者の業務代替者に手当を支給 5万円
③業務代替支援(2)手当支給等B 介護短時間勤務者の業務代替者に手当を支給 3万円
④介護休暇制度有給化支援 有給の介護休暇制度を導入し労働者が利用【新設】 30万円
  • ①〜③はそれぞれ1事業主あたり5人まで、④は1事業主あたり1回限りです※1
  • 一部については制度利用期間等に応じて増額があります※1
  • 2026年度からは、介護休業および介護両立支援制度について、休業取得者・制度利用者が有期雇用労働者の場合に10万円が加算されます※3

4つの類型と支給要件

すべてに共通する2つの前提

①介護休業と②介護両立支援制度には、共通の前提要件があります。ここが実務上の山場です※1

★1

介護休業の取得・職場復帰支援に関する方針の社内周知

会社として制度利用を促進する方針を明確にし、全従業員に周知します。2025年4月改正で義務化された「雇用環境の整備」の選択肢のひとつと重なるため、法対応と同時に進められます。

★2

労働者との面談を実施し、仕事と介護の両立支援プランを作成・実施

対象となる従業員と面談し、業務体制や制度利用の見通しを整理したプランを作成します。プランは原則として介護休業の開始前に作成する必要があります。ここが後述する最大の注意点です。

①介護休業(40万円)

★1・★2に加えて、対象労働者が連続5日以上の介護休業を取得し、復帰後も支給申請日まで継続雇用されていることが必要です※1

②介護両立支援制度(20万円/25万円)

★1・★2に加えて、いずれかの介護両立支援制度を対象労働者が一定基準以上利用し、支給申請日まで継続雇用されていることが必要です。2026年度の介護両立支援制度は次の5つです※1

  • 時差出勤制度
  • 短時間勤務制度
  • 在宅勤務制度
  • フレックスタイム制度
  • 介護サービス費用補助制度

③業務代替支援(20万円/5万円/3万円)

(1)新規雇用は、対象労働者が介護休業を連続5日以上取得し、業務代替要員を新規雇用または派遣受入で確保した場合が対象です。

(2)手当支給等は、業務を代替する労働者への手当制度等を就業規則等に規定したうえで、対象労働者が介護休業を連続5日以上取得または短時間勤務制度を合計15日以上利用し、業務代替者へ手当を支給した場合が対象となります※1

④介護休暇制度有給化支援(30万円・新設)

2026年度に新設された類型です。介護休暇制度を有給化し、利用に関する方針を社内周知したうえで、労働者が一定基準以上利用した場合に支給されます※1

④は着手しやすい類型です。介護休暇は法律上、有給とすることまでは求められていません。多くの企業が無給としているため、有給化は法定を上回る取り組みになります。従業員にとって最も体感しやすい改善でもあり、「制度はあるが使われない」状態を動かすきっかけになります。1事業主1回限りですが、就業規則の改定という一度きりの作業で完結する点も進めやすい理由です。

2026年度の主な変更点

2026(令和8)年度は、介護離職防止支援コースに次の変更が入りました※3

1

制度メニューから2つが削除

介護両立支援制度のうち「所定外労働の制限制度」と「深夜業の制限制度」が削除されました。これらは法定の制度であるため、助成の対象からは外れた形です。過年度の情報をもとに計画を立てている場合は要注意です。

2

介護休暇制度の有給化が独立した助成金に

有給の介護休暇制度を導入し、利用等の要件を満たした事業主に1回限り30万円が支給されます。

3

有期雇用労働者への加算を新設

介護休業および介護両立支援制度について、休業取得者・制度利用者が有期雇用労働者の場合、10万円を加算

申請の流れ

おおまかな流れは次のとおりです。準備のほとんどが「従業員が介護休業を取得する前」に位置している点を押さえてください。

1

【事前】方針を策定し、就業規則等に明文化して周知する

介護休業の取得・職場復帰支援に関する方針を定め、全従業員に周知します。

2

【事前】面談の様式とプランの雛形を用意する

申出を受けてから作り始めると間に合いません。厚生労働省が様式例を公開しています。

3

従業員から申出を受け、面談を実施しプランを作成する

原則として介護休業の開始前に作成します。

4

プランにもとづき休業・制度利用を実施し、職場復帰させる

連続5日以上の介護休業など、類型ごとの日数要件を満たす必要があります。

5

支給申請書を都道府県労働局へ提出する

申請期限は取組の類型ごとに定められています。期限を過ぎると受給できません。

取りこぼしが起きやすい5つのポイント

注意 1

事後申請ができない

最も多い取りこぼしです。従業員が介護休業から復帰した後に「助成金が使えたらしい」と気づいても、方針の周知やプラン作成が済んでいなければ要件を満たしません。1件目の申出を受ける前に準備を終えることが実質的な条件です。

注意 2

年度で要件が変わる

2026年度も制度メニューの削除と新類型の追加がありました。前年度の資料をもとに準備を進めると、要件を外すおそれがあります。着手時に必ず当年度版のパンフレットと支給要領を確認してください。

注意 3

就業規則への明文化が要る

③業務代替支援(2)では、業務を代替する労働者への手当制度等を就業規則等に規定することが要件です。運用だけで手当を支給していても対象になりません。

注意 4

支給申請日まで継続雇用が必要

①②では、対象労働者が支給申請日まで雇用されていることが要件です。復帰後まもなく退職した場合は支給されません。復帰後の定着支援まで含めて設計する必要があります。

注意5:助成金を目的化しない。①〜③は1事業主あたり5人までで、金額も1件40万円が上限です。助成金だけを目的に工数を投じると割に合いません。本来の目的は介護離職の防止であり、助成金はその取り組みの費用を一部回収できる仕組みと位置づけてください。方針の周知も面談も両立支援プランも、助成金がなくても実施する価値のある施策です。

まず何をするか

2025年4月の法改正で義務化された「雇用環境の整備」と、この助成金の要件「方針の社内周知」は重なります。法改正への対応を進める際に、助成金の要件も同時に満たす形で設計すると効率的です。制度そのものの整備は就業規則の介護休業規定の見直し、取り組み全体の位置づけは介護離職を防ぐにはをご覧ください。

よくあるご質問

両立支援等助成金の介護離職防止支援コースは大企業でも使えますか?

介護離職防止支援コースは中小企業事業主が対象です。中小企業に該当するかは業種ごとの資本金額または常時雇用する労働者数で判定されます。自社が該当するかは、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)にご確認ください。

従業員が介護休業を取得した後から申請できますか?

支給要件には、介護休業の取得・職場復帰支援に関する方針の社内周知と、労働者との面談にもとづく仕事と介護の両立支援プランの作成・実施が含まれます。プランは原則として介護休業の開始前に作成する必要があるため、従業員が休業に入ってから準備を始めても間に合わない可能性があります。申出を受ける前の段階で、方針の周知と様式の準備を済ませておくことをおすすめします。詳細な取扱いは最新の支給要領でご確認ください。

1年度に何人分まで申請できますか?

2026年度の場合、介護休業・介護両立支援制度・業務代替支援については、それぞれ1事業主あたり5人までです。新設された介護休暇制度有給化支援は1事業主あたり1回限りとなっています。

出典

※本記事は2026年8月時点の情報に基づいて作成しています。支給要件・支給額は年度により変更されます。申請にあたっては、必ず厚生労働省が公表する当年度の支給要領・パンフレットおよび所轄の都道府県労働局にご確認ください。個別の適用の可否については、労働局または社会保険労務士等の専門家にご相談ください。

助成金の要件と法対応をまとめて

介護離職防止サポート

助成金の要件である「方針の社内周知」や「両立支援プランの作成」は、2025年4月改正で義務化された雇用環境の整備と重なります。東急ウェルネスでは、管理職・従業員向けのセミナー、ケアマネジャー等による相談窓口の設置を通じて、法対応と介護離職防止をまとめてご支援しています。何から着手すべきかの整理からご相談ください。

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