介護離職とは|年約10万人の現状と理由、辞めたあとの生活
監修 東急ウェルネス株式会社 介護離職防止サポート 責任者 A.T.
介護離職とは、家族の介護を理由に仕事を辞めることです。介護・看護を理由に前職を辞めた人は、総務省の調査で1年間に10.6万人(2022年)、厚生労働省の調査で9.3万人(2024年)と、どちらも年約10万人です※1※2。辞めた人の約8割は、その後も仕事に就いていません※1。本記事では、介護離職の人数と推移、辞めているのは誰か、なぜ辞めるのか、辞めたあとの生活、企業と社会への影響を、公的な統計で整理します。
介護離職とは|家族の介護を理由に仕事を辞めること
介護離職は法律の用語ではなく、家族の介護を理由に仕事を辞めることを指す言い方です。公的な統計では、前の仕事を辞めた理由が「介護・看護のため」である人を数えています※1※2。
近い言葉に、働きながら家族の介護をする「ビジネスケアラー」と、介護をしていることを勤務先に伝えていない「隠れ介護」があります。介護離職は、ビジネスケアラーが仕事と介護の両立を続けられなくなったときに起きます。ビジネスケアラーはビジネスケアラーとは|2030年318万人の問題と企業の対策で、隠れ介護は隠れ介護とは|社内アンケートで可視化する設計と質問例で解説しています。
介護離職は年何人か|2つの統計で年約10万人
介護離職の人数には、調べ方の違う2つの統計があります。
| 統計 | 人数 | 数え方 |
|---|---|---|
| 総務省 就業構造基本調査 |
10.6万人(2022年) | 過去1年間に「介護・看護のため」前職を辞めた人。5年ごとの調査※1 |
| 厚生労働省 雇用動向調査 |
9.3万人(2024年) | 1年間に個人的な理由で辞めた人のうち、理由が「介護・看護」の人。毎年の調査※2 |
人数の推移
就業構造基本調査では、介護・看護のために過去1年間に前職を辞めた人は、2007年の14.5万人から、2012年10.1万人、2017年9.9万人と減ってきましたが、2022年は10.6万人と、増加に転じました※1。雇用動向調査では、2000年の3.8万人から増減を繰り返しながら、2024年には約9.3万人と2.4倍以上になっています。個人的な理由で辞めた人に占める割合も、0.86%から1.70%に上がりました※2。
一方で、家族の介護をしながら働いている人は365万人で、介護をしている人の58.0%にあたり、5年前より2.8ポイント上がっています※1。辞める人の背後に、働きながら介護をしている人がその30倍以上いる計算です。
辞めているのは誰か|女性が多く、40〜50代が中心
2022年の10.6万人のうち、女性が8.0万人、男性が2.6万人で、女性が4分の3を占めます※1。雇用動向調査(2024年)でも、男性3.4万人・女性5.9万人で、女性が約63%です※2。
年代別では、雇用動向調査(2024年)で、男性は45〜49歳、女性は55〜59歳がもっとも多くなっています※2。親の介護が始まりやすい年代と重なり、職場では管理職や中堅として仕事の中心を担っていることが多い層です。
| 年代(2024年) | 男性 | 女性 |
|---|---|---|
| 40〜44歳 | 1.1千人 | 6.2千人 |
| 45〜49歳 | 12.5千人 | 7.4千人 |
| 50〜54歳 | 2.5千人 | 10.0千人 |
| 55〜59歳 | 6.5千人 | 15.6千人 |
| 60〜64歳 | 4.3千人 | 8.0千人 |
出典:厚生労働省「雇用動向調査」(2024年)。生命保険文化センターの整理による※2。40歳未満と65歳以上は省略しています。
なぜ辞めるのか|理由の上位は「制度」と「情報」
厚生労働省の調査で、「仕事を続けたかった」のに介護で辞めた人が挙げた理由の上位2つは、次のとおりでした※3。
勤務先の両立支援制度の問題や、介護休業等を取得しづらい雰囲気等があった 43.4%
制度が無い、知らない、あっても言い出しにくい、という職場の問題です。
介護保険サービス等が利用できなかった・利用方法がわからなかった 30.2%
サービスを使えないまま自分で介護を担い、両立が難しくなる形です。
どちらも「介護そのものが大変だから」ではなく、制度と情報の問題です。介護休業は「自分で介護するための休み」と思われがちですが、厚生労働省は「介護を要する家族を支える体制をつくるための休み」と位置づけています。制度の中身は介護休業とは|93日・3回の取り方と条件、給付金・手続きで整理しています。
辞めたあとの生活|約8割が仕事に就いていない
2022年に介護・看護のために前職を辞めた10.6万人のうち、調査の時点で仕事に就いていたのは2.3万人、仕事に就いていなかったのは8.3万人(約8割)でした※1。介護が続くあいだは、新しい仕事に就きにくいことがうかがえます。
辞めると、次のことが起きます。
- 収入がなくなる。介護にかかるお金を親の年金や貯蓄でまかなえないとき、自分の収入がないまま補うことになります
- 厚生年金の加入期間が途切れる。将来受け取る自分の年金にも響きます
- 失業給付は、すぐには受け取れないことがある。雇用保険の基本手当は、すぐに働ける状態で仕事を探している人が対象で、介護に専念している間は受け取れません
- 介護が終わったあとの仕事探しは、年齢が上がってからになる。介護は年単位で続くこともあります
家族の介護で辞めた場合の失業給付(特定理由離職者や受給期間の延長)と、辞める前に確かめることは、親の介護で退職する前に|辞めずに済む制度と判断の順番にまとめています。失業給付の条件・給付日数・手続きは介護離職の失業保険|特定理由離職者の条件・給付日数・必要書類でくわしく解説しています。
企業と社会への影響|2030年の経済損失は約9兆円
経済産業省は、仕事と介護の両立が難しいことによる経済損失を、2030年に約9兆1,792億円と試算しています※4。同じ推計で、2030年に働きながら介護をする人(ビジネスケアラー)は約318万人です。
| 損失の種類 | 金額(2030年) | 割合 |
|---|---|---|
| 両立困難による 労働生産性損失 |
7兆9,163億円 | 約86% |
| 介護離職による損失 (労働・育成・採用) |
1兆2,629億円 | 約14% |
| 合計 | 9兆1,792億円 | 100% |
損失の大部分は、辞めずに働き続けている人の生産性の低下から生じています※4。介護離職は、その手前にある両立の難しさが、もっとも深刻な形で表に出たものです。企業ごとの損失額の試算は介護離職のコストを試算する|1人辞めるといくら失われるかで解説しています。
介護離職を防ぐには|本人と会社にできること
介護に直面した本人
- 辞めると決める前に、介護休業・介護休暇・短時間勤務などの制度を確かめる
- 親が住む地域の地域包括支援センターに相談し、介護保険サービスを使い始める
- 会社に介護が始まったことを伝える。2025年4月から、会社は申出を受けたら制度を個別に知らせることが義務になっています
会社への伝え方と例文は親の介護で仕事を休むときの伝え方|上司への例文と使える休みにまとめています。
会社
- 介護をしている従業員が何人いるかを、匿名のアンケートなどで把握する
- 40歳になった従業員への情報提供と、介護に直面した従業員への個別の周知を、確実に行う
- 管理職研修と相談窓口で、「言い出しにくい雰囲気」をなくす
- 短時間勤務やテレワークなど、介護をしながら働ける選択肢を用意する
企業の対策の全体像は介護離職を防ぐには|企業がとるべき対策を体系的に解説で、順番を追って解説しています。
よくあるご質問
介護離職は年間何人ですか?
総務省の就業構造基本調査では、介護・看護のために過去1年間に前職を辞めた人は10.6万人(2022年)です。厚生労働省の雇用動向調査では約9.3万人(2024年)で、どちらの統計でも年約10万人です。
介護離職は何歳に多いですか?
厚生労働省の雇用動向調査(2024年)では、男性は45〜49歳、女性は55〜59歳がもっとも多くなっています。親の介護が始まりやすく、職場では仕事の中心を担っていることが多い年代です。
介護離職は増えていますか?
総務省の就業構造基本調査では、2007年の14.5万人から2017年の9.9万人まで減ってきましたが、2022年は10.6万人と増加に転じました。厚生労働省の雇用動向調査では、2000年の3.8万人から2024年の約9.3万人へと2.4倍以上になっています。
介護離職したら失業手当はもらえますか?
すぐに働ける状態で仕事を探していれば受け取れます。家庭の事情が急に変わって辞めた「特定理由離職者」とハローワークに認められれば、自己都合退職の給付制限はかかりません。介護に専念していてすぐに働けない間は受け取れないので、受給期間の延長を申請しておきます。
介護離職を避けるにはどうすればいいですか?
辞めると決める前に、介護休業・介護休暇・短時間勤務などの制度を確かめ、親が住む地域の地域包括支援センターに相談して介護保険サービスを使い始めることです。会社に伝えれば、2025年4月から会社は制度を個別に知らせる義務があります。
介護離職とビジネスケアラーは何が違いますか?
ビジネスケアラーは、働きながら家族の介護をしている人です。介護離職は、そのビジネスケアラーが両立を続けられなくなって仕事を辞めることです。2030年にはビジネスケアラーが約318万人になると推計されています。
出典
- ※1 総務省統計局「令和4年就業構造基本調査 結果の概要」(介護をしている者629万人・うち有業者365万人、介護・看護のために過去1年間に前職を離職した者10.6万人とその推移・就業状態)
- ※2 公益財団法人 生命保険文化センター「介護離職者はどれくらい?」(厚生労働省「雇用動向調査」2024年の整理。介護・看護を理由とする離職者約9.3万人、性・年齢階級別)
- ※3 厚生労働省「令和3年度 仕事と介護の両立等に関する実態把握のための調査研究事業報告書」
- ※4 経済産業省「仕事と介護の両立支援に関する経営者向けガイドライン」(2024年3月26日公表)
※本記事は2026年10月時点で公表されている統計に基づいて作成しています。2つの統計は調べ方と対象の期間が違うため、人数は一致しません。
「辞めずに済んだ」を増やすために
介護離職防止サポート
介護離職の理由の上位は、制度の問題と情報の不足です。東急ウェルネスでは、従業員の実態把握から、40歳時点の情報提供、管理職研修、ケアマネジャー等の有資格者による常設相談窓口まで、会社の中で介護離職を防ぐ仕組みづくりを一貫してご支援します。