制度・実務

介護離職の失業保険|特定理由離職者の条件・給付日数・必要書類

監修 東急ウェルネス株式会社 介護離職防止サポート 責任者 A.T.

雇用保険の失業等給付の受給資格者のしおりのイメージ

親の介護を理由に会社を辞めた場合も、雇用保険の失業保険(基本手当)は受け取れます。家庭の事情が急に変わって辞めた人は「特定理由離職者」と認められることがあり、そうなると自己都合退職の給付制限(原則1か月)がかからず、受け取るのに必要な加入期間も短くなります※1。ただし、介護に専念していて、すぐには働けない間は受け取れません。この記事では、認められる条件、給付日数、ハローワークでの手続きと持っていく書類、受給期間の延長、介護休業のあとに辞める場合の注意を、辞める本人と人事担当者の両方に向けて整理します。

介護で辞めても受け取れる|特定理由離職者と認められると変わること

失業保険(雇用保険の基本手当)は、就職しようとする意思といつでも就職できる能力があるのに、職業に就けない人に支払われます※3。介護を理由に辞めた人も、この状態にあれば受け取れます。そのうえで、辞めた理由がハローワークに特定理由離職者と認められると、ふつうの自己都合退職と次の点が変わります。

項目 ふつうの自己都合退職 特定理由離職者(介護など)
給付制限 7日の待期のあと、原則1か月は支給されない(5年間に2回以上、自己都合退職で受給している人は3か月)※4 かからない。7日の待期のあとから支給される
必要な加入期間 離職前の2年間に、被保険者期間が通算12か月以上 離職前の1年間に、通算6か月以上でもよい※5
給付日数 加入期間に応じて90〜150日 ふつうの自己都合退職と同じ90〜150日※2

辞めた理由が会社の側にあるとき(下の節)は、さらに給付日数の多い特定受給資格者になります。どちらに当たるかを決めるのは、住所を管轄するハローワークです。

特定理由離職者と認められる条件|家庭の事情の急変と、30日の見込み

介護で辞めた場合に当たるのは、特定理由離職者の基準のうち、次のものです※1。

父若しくは母の死亡、疾病、負傷等のため、父若しくは母を扶養するために離職を余儀なくされた場合又は常時本人の看護を必要とする親族の疾病、負傷等のために離職を余儀なくされた場合のように、家庭の事情が急変したことにより離職した者

ハローワークの業務の取扱いでは、親の扶養や親族の看護はあくまで例で、家庭の事情が急に変わって辞めたことが基準だとされています。そして、常時看護が必要な親族のために辞めたといえるには、会社に退職を申し出た時点で、看護が必要な期間がおおむね30日を超えると見込まれていたことが必要です※2。

介護が必要になってから長く時間がたち、急な変化がないまま辞めた場合や、看護が短期間で済む見込みだった場合は、認められないことがあります。退職を申し出た時点で、家族がどんな状態で、どのくらいの期間の看護や介護が必要だったかを、あとで説明できるようにしておきます。

会社都合(特定受給資格者)になる場合|休業を拒まれた・遠くへの転勤

次のような理由で辞めたときは、倒産や解雇と同じ特定受給資格者として扱われます※1※2。給付制限がかからず、給付日数も年齢と加入期間に応じて最大330日と手厚くなります。

  • 介護休業や介護休暇を申し出たのに、正当な理由なく拒まれ、休業の開始予定日までに取れなかった
  • 介護休業や介護休暇の申し出・取得を理由に、降格・減給・不利益な配置転換などの不利益な取扱いを受けた
  • 常時介護が必要な家族がいるのに、通勤が難しい遠方への転勤を命じられた
  • 介護休業などに関する上司や同僚の言動で職場の環境が害されているのを、会社が知りながら必要な措置をとらなかった

これらに当たるかどうかも、離職票の離職理由と、それを確かめる資料をもとにハローワークが判断します。会社に拒まれたり、不利益に扱われたりしたことは、メールや書面で記録を残しておきます。

給付日数と1日あたりの額|特定理由離職者は90〜150日

カレンダーと電卓のイメージ

介護など家庭の事情で辞めた特定理由離職者の給付日数は、ふつうの自己都合退職と同じ表で決まります。特定受給資格者は、年齢と加入期間で決まる別の表で、日数が多くなります※2。

雇用保険の加入期間 特定理由
離職者
特定受給
資格者
(45〜59歳)
1年未満 90日 90日
1年以上5年未満 90日 180日
5年以上10年未満 90日 240日
10年以上20年未満 120日 270日
20年以上 150日 330日

特定受給資格者の日数は、年齢によって変わります(表は45歳以上60歳未満の場合)。1日あたりの額(基本手当日額)は、離職前6か月の賃金をもとに計算し、賃金のおよそ50〜80%(60〜64歳は45〜80%)で、賃金の低い人ほど高い割合になります※3。

手続きと持っていくもの|離職票の離職理由がカギ

退職すると、会社から離職票(離職票-1・離職票-2)が届きます。離職票-2には、会社が書いた離職理由と、本人が書く欄があります。ハローワークの案内では、離職票-2の記載内容をよく確かめたうえで、離職理由欄(⑦欄)と離職者の署名欄(⑰欄)に必要なことを書き、書いた内容を確認できる資料を持っている場合は持参するよう求めています※5。

介護で辞めた場合の資料としては、家族の病気やけが、介護が必要な状態とその期間が分かるもの(例:医師の診断書、要介護認定の結果の通知など)が考えられます。何が必要かは事情によって違うので、事前に住所を管轄するハローワークに確かめておくと確実です。ハローワークは、会社と本人の主張を、それぞれの資料で確かめて判断します※1。

  • 退職後:会社から離職票-1・離職票-2を受け取る
  • ハローワークで:求職の申し込みをし、離職票と本人確認の書類などを出す。離職理由もここで確かめられる
  • 受給資格が決まったら:7日の待期のあと、4週間ごとの認定日に失業の認定を受けて支給される

退職の前に、人事担当者に離職票の離職理由をどう書くかを確かめておくと、手続きで迷いません。人事担当者の方は、介護による退職であることが分かるよう、事実に沿って記載してください。

介護に専念する間は、受給期間を延ばしておく

基本手当を受け取れる期間(受給期間)は、原則として離職した日の翌日から1年間です。その間に、親族の看護や介護で引き続き30日以上働けないときは、働けない日数のぶん受給期間を延ばせます。延ばせるのは最長3年間で、親族は6親等以内の血族、配偶者、3親等以内の姻族です※3※6。

申請は、30日以上働けなくなった日の翌日以降、早めに行うのが原則ですが、延長後の受給期間の最後の日までなら申請できます。代理人や郵送でもかまいません※3。延ばさずに1年が過ぎると、給付日数が残っていても受け取れなくなるので、介護が落ち着いてから仕事を探すつもりなら、先に延長を申請しておきます。

介護休業のあとに辞める場合の注意

介護休業給付金は、休業のあとも働き続けることを前提にした給付です。介護休業を始める時点で、休業のあとに辞めることが決まっている人は対象になりません。休業の途中で辞めた場合は、辞めた日を含む期間(支給単位期間)の分は支給されません※7。

介護休業は、自分で介護をするための期間ではなく、介護の体制を整えて、働き続けられるかを見極める期間です。休業中に介護サービスの利用を固め、それでも続けられないと判断したときに退職を考えるのが順番です。介護休業の取り方は介護休業とは|93日・3回の取り方と条件、給付金・手続き、受け取れる額は介護休業給付金はいくら・いつもらえる|1日だけ・対象者・条件で整理しています。

辞める前に確かめること

  • 辞めずに済む制度:介護休業(通算93日)、介護休暇、短時間勤務、残業の免除などで続けられないか
  • 離職票の書き方:介護による退職であることを、会社がどう書くか
  • 受給期間の延長:すぐに働けないなら、延長を申請する時期
  • 収入の見通し:給付制限がかからなくても、受け取れるのは働ける状態になってから

辞めるかどうかを決める順番は親の介護で退職する前に|辞めずに済む制度と判断の順番にまとめています。

よくあるご質問

親の介護で退職した場合、失業保険はもらえますか?

もらえます。雇用保険の基本手当は、就職する意思と能力があるのに職業に就けない人に支払われるので、介護を理由に辞めた人も対象です。家庭の事情が急に変わって辞めたと認められれば特定理由離職者になり、給付制限がかかりません。ただし、介護に専念していて、すぐには働けない間は受け取れません。

介護のために自己都合で辞めても、給付制限はかかりますか?

特定理由離職者と認められれば、給付制限はかかりません。7日の待期のあとから支給されます。認められない場合は、ふつうの自己都合退職として、原則1か月の給付制限がかかります(2025年4月1日以降に辞めた場合)。

特定理由離職者と認めてもらうのに、診断書は必要ですか?

必ず必要とは決まっていませんが、離職票に書いた理由を確認できる資料を持っている場合は、持参するよう求められます。家族の病気やけが、介護が必要な状態と期間が分かるもの(医師の診断書や要介護認定の結果の通知など)を用意し、事前にハローワークに確かめると確実です。

介護休業のあとに退職した場合、失業保険はどうなりますか?

介護休業のあとに退職しても、条件を満たせば失業保険(基本手当)を受け取れます。ただし、介護休業を始める時点で退職が決まっていた場合は、介護休業給付金の対象になりません。休業の途中で辞めると、辞めた日を含む期間の介護休業給付金も支給されません。

受給期間の延長は、いつまでに申請すればよいですか?

引き続き30日以上働けなくなった日の翌日以降、早めに申請するのが原則ですが、延長後の受給期間の最後の日までなら申請できます。代理人や郵送でも申請できます。延ばせるのは最長3年間です。

パートやアルバイトでも受け取れますか?

雇用保険に加入していれば受け取れます。特定理由離職者と認められれば、離職前の1年間に被保険者期間が通算6か月以上あれば、受け取る資格を満たします。

出典

※本記事は2026年10月時点の情報に基づいて作成しています。特定理由離職者・特定受給資格者に当たるかどうかは、個別の事情をもとにハローワークが判断します。実際の手続きは、住所を管轄するハローワークでご確認ください。

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