制度・実務

親を扶養に入れる条件|税と健康保険の違い・別居・75歳以上

監修 東急ウェルネス株式会社 介護離職防止サポート 責任者 A.T.

「扶養家族」の文字と家族の人形のイメージ

「親を扶養に入れる」には、税の扶養(扶養控除)と健康保険の扶養(被扶養者)の2つがあり、条件も手続きも別々です。2026年分の税の扶養は、親の合計所得金額が62万円以下(年金だけなら、65歳以上で年金収入172万円以下)が条件です※1※2。健康保険は、60歳以上の親なら年収180万円未満などが条件で、75歳以上の親は入れません※5。この記事では、2つの違い、年金だけの親の目安、別居の親、75歳以上の親、介護のお金との関係、勤め先に出す書類を、働く人と人事担当者の両方に向けて整理します。

税の扶養と健康保険の扶養は、別の制度

「年収の壁」の文字と家の模型、電卓のイメージ

税の扶養は、親を養っている子の所得税・住民税を軽くする仕組み(扶養控除)です。健康保険の扶養は、親が子の勤め先の健康保険に家族として入り、自分で保険料を払わずに医療を受けられる仕組み(被扶養者)です。片方だけ当てはまることもあるので、別々に確かめます。

項目 税の扶養(扶養控除) 健康保険の扶養(被扶養者)
親の収入の上限 合計所得金額62万円以下(2026年分) 年間収入180万円未満(60歳以上の場合)
年金だけの親 65歳以上は年金収入172万円以下、65歳未満は122万円以下 年金の額を足して180万円未満
遺族年金・
障害年金
数えない(税金がかからない年金のため) 数える
別居の親 常に生活費などを送っていればよい 実の父母はよい(親の収入が仕送りの額より少ないこと)。配偶者の父母は同居が条件
年齢 上限なし。70歳以上は控除の額が増える 75歳以上は入れない(後期高齢者医療制度に入るため)
勤め先に出す書類 扶養控除等(異動)申告書 被扶養者(異動)届

税は「所得」(年金なら公的年金等控除を引いたあとの額)で、健康保険は「収入」(引く前の額)で見ます。上限の言い方も、税は「以下」、健康保険は「未満」です。

税の扶養(扶養控除)の条件|2026年分は所得62万円以下

親を扶養控除の対象にできるのは、その年の12月31日の時点で、次のすべてに当てはまる場合です※1。

  • 配偶者以外の親族であること(父母・祖父母のほか、配偶者の父母も含みます)
  • 納税者(子)と生計を一にしていること
  • 年間の合計所得金額が62万円以下であること(2026年分。2025年分は58万円以下)
  • 青色申告者の事業専従者として給与を受けていないこと、白色申告者の事業専従者でないこと

62万円は、令和8年度の税制改正で58万円から引き上げられた金額です。2026年12月1日に施行され、2026年分の所得税から使われるので、会社員は12月の年末調整で反映されます※1※3。改正で新しく対象になる親がいる場合は、扶養控除等(異動)申告書の「異動月日及び事由」の欄に「令和8年12月1日 改正」などと書いて、勤め先に出します※3。給与だけの親なら、給与の収入が136万円以下で62万円以下になります※2。

控除される額|70歳以上なら48万円、同居なら58万円

親の区分 所得税 住民税
70歳未満 38万円 33万円
70歳以上
(老人扶養親族)
48万円 38万円
70歳以上で同居
(同居老親等)
58万円 45万円

70歳以上かどうかは、その年の12月31日の年齢で決まり、2026年分は昭和32年1月1日以前に生まれた人が当たります※4。同居老親等は、子か配偶者の父母・祖父母で、いつも一緒に暮らしている人です。病気の治療で入院していても同居として扱いますが、老人ホームなどに入所している場合は同居に当たりません※2。3つの区分の決まり方と、年の途中で老人ホームに入ったときや亡くなったときの扱いは、同居老親等とは|老人扶養親族との違い、入院・老人ホームの扱いにまとめています。

控除は「所得から差し引く額」なので、実際に軽くなる税金は税率で変わります。たとえば所得税の税率が10%の人が70歳以上の親を扶養に入れると、所得税はおよそ4.8万円、住民税(税率10%)はおよそ3.8万円軽くなる計算です。住民税の所得の上限も、2026年分の所得(2027年度の住民税)から62万円以下になります。

健康保険の扶養(被扶養者)の条件|60歳以上は年収180万円未満

子の勤め先の健康保険で親を被扶養者にするには、親が日本国内に住んでいて、主として子の収入で生活していることに加えて、次の条件を満たします※5。

  • 続柄:実の父母・祖父母は、同居していなくてもよい。配偶者の父母(義理の父母)は、同居していることが条件
  • 収入:年間収入が180万円未満(60歳以上の場合。60歳未満は130万円未満)
  • 同居なら:親の収入が、子の年収の半分未満
  • 別居なら:親の収入が、子からの仕送りの額より少ない

「年間収入」は、過去の実績ではなく、扶養に入る時点からの1年間の見込みです。公的年金は収入に含み、遺族年金や障害年金のように税金がかからない年金も含みます※5。この点が税の扶養と逆なので、遺族年金を受け取っている親は、税の扶養には入れても、健康保険の扶養には入れないことがあります。

親が被扶養者になると、親は国民健康保険から外れ、保険料を自分で払わなくてよくなります。子の保険料は、子の標準報酬月額に保険料率をかけて決まるので、協会けんぽでは被扶養者が増えても変わりません。医療費の窓口負担は、70歳未満が3割、70〜74歳が2割です(70〜74歳は、子の収入が一定以上だと3割になることがあります)※6。

年金だけの親は、いくらまでなら入れるか|計算例

年金だけで暮らしている親の目安を、2026年分の数字で計算すると次のとおりです。税は、年金の収入から公的年金等控除(65歳以上は110万円、65歳未満は60万円)を引いた所得で見て、健康保険は年金の額そのままで見ます※2※4※5。

親の状況 税の扶養 健康保険の扶養
68歳の母
老齢年金 年170万円
入れる(170万円−110万円=60万円で、62万円以下) 入れる(180万円未満。同居なら子の年収が340万円を超えること、別居なら仕送りが年170万円を超えること)
72歳の母
遺族厚生年金 年200万円
入れる(遺族年金には税金がかからないので、所得は0円) 入れない(180万円以上)
76歳の父
老齢年金 年150万円
入れる(150万円−110万円=40万円) 入れない(75歳以上は後期高齢者医療制度)

どれも、ほかの条件(生計を一にしていることなど)を満たした場合の計算例です。年金のほかに収入があるときは、税は勤め先の年末調整の担当者か税務署、健康保険は勤め先の担当者か加入している健康保険に確かめてください。

別居の親を扶養に入れるには|仕送りと「生計を一にする」

税の扶養は、同居が条件ではありません。勤務などの都合で別に暮らしていても、常に生活費や療養費などを送っていれば「生計を一にする」とされます※7。法令上、送金の証明を会社に出す決まりはありませんが、国税庁は、会社が振込票や現金書留の控えで送金の事実を確かめることを勧めています※7。

健康保険では、実の父母なら別居でも被扶養者になれます。親の年間収入が子からの仕送りの額より少ないことが条件で、届け出のときに、送った人・受け取った人・金額がわかる書類(通帳の写し、振込明細書、現金書留の控えなど)を付けます※5。配偶者の父母は、同居していなければ被扶養者になれません。

きょうだいで同じ親を扶養に入れることはできない

税の扶養では、同じ親を2人の子の扶養親族にすることはできず、だれか1人だけです。きょうだいが同じ額ずつ仕送りをしていても同じです※7。だれの扶養にするかは、きょうだいで話し合って決めます。介護の費用をきょうだいでどう分けるかは、親の介護の義務はどこまで|しないとどうなる?兄弟とお金の分担で整理しています。

75歳以上の親は、健康保険の扶養に入れない

75歳になると、すべての人が後期高齢者医療制度に入るため、子の健康保険の被扶養者ではなくなります※5※8。75歳の誕生日を迎えたら、勤め先を通じて、被扶養者から外す届け出をします。一方、税の扶養には年齢の上限がありません。75歳以上の親でも、所得などの条件を満たせば扶養控除を受けられます。

75歳で後期高齢者医療制度に移る直前まで会社の健康保険の被扶養者だった人には、保険料を軽くする仕組みがあります。東京都の場合、保険料のうち均等割が加入から2年を経過する月まで5割軽減され、所得割は当面かかりません※8。

介護のお金との関係|扶養に入れても変わらないもの

親を扶養に入れても、介護のお金の仕組みのうち、次のものは変わりません。

  • 介護保険料:65歳以上の親は、子の健康保険の被扶養者になっても、介護保険料を自分で市区町村に納めます(原則、年金から天引き)
  • 介護サービスの自己負担の割合:1割〜3割の割合は、親本人の所得と、同じ世帯の65歳以上の人の年金収入などで決まり、64歳以下の子の所得は数えません
  • 高額介護サービス費の上限:住民票上の世帯の住民税の課税の状況などで決まり、税や健康保険の扶養に入っているかどうかは関係しません

40〜64歳の親が被扶養者になったときは、親の介護保険料を個別に納める必要はありません※9。ただし、健康保険組合によっては、40歳未満の子に、40歳以上の被扶養者の分の介護保険料を求める決まり(特定被保険者)があります※10。介護保険料の決まり方は、介護保険料はいつまで払う?40歳から一生・いくら引かれるかで解説しています。

要介護認定を受けただけでは、税の障害者控除の対象にはなりません。65歳以上で、市区町村から「障害者に準ずる」と認定を受ければ、扶養控除とは別に障害者控除を受けられます※11。

手続き|勤め先に出す2つの書類

税の扶養:扶養控除等(異動)申告書

親を扶養親族として「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」に書き、勤め先に出します。原則はその年の最初の給与までに出し、年の途中で扶養に入れるときは、その都度、異動の申告をします。出し忘れていても、年末調整を行う時までに申告すれば、年末調整で反映されます※2。

健康保険の扶養:被扶養者(異動)届

協会けんぽの場合は、子が勤め先を通じて「健康保険 被扶養者(異動)届」を、扶養に入れる事実があった日から5日以内に出します※5。主な添付書類は次のとおりです。

  • 続柄の確認:戸籍謄本か住民票の写し。子と親のマイナンバーを届に書き、会社が続柄を確かめた場合は省けます
  • 収入の確認:税の扶養に入っていれば、会社の証明で足ります。そうでなければ、年金額の改定通知書などの写し。遺族年金や障害年金があるときは、受け取る額がわかる通知書の写しも付けます
  • 別居のとき:仕送りの事実と額がわかる書類(通帳の写し、振込明細書、現金書留の控えなど)

健康保険組合に入っている会社では、組合の書類と手順に沿って出します。

人事担当者の方へ|2026年の年末調整で確かめたいこと

  • 所得の上限が62万円に:年金だけの65歳以上の親なら、年金収入172万円以下まで対象になります。新しく対象になる親がいないか、扶養控除等申告書の出し直しを案内します
  • 別居の親:扶養に入れている従業員には、送金の事実を振込票などで確かめます
  • 75歳になった親:健康保険の被扶養者から外す届け出が要ります。税の扶養は続けられます
  • 老人ホームに入所した親:同居老親等(58万円)には当たらなくなります

年末調整での介護保険料の扱い(親の分を払ったとき、年金から天引きされているとき)は、介護保険料の年末調整|年金天引き・親の分の控除と書き方で解説しています。

よくあるご質問

親を扶養に入れると、税金はいくら安くなりますか?

所得から差し引かれる額は、70歳未満の親で38万円、70歳以上で48万円、70歳以上で同居なら58万円です(所得税)。実際に軽くなる税金は税率で変わり、所得税の税率が10%の人が70歳以上の親を扶養に入れると、所得税がおよそ4.8万円、住民税がおよそ3.8万円軽くなる計算です。

別居している親も扶養に入れられますか?

入れられます。税の扶養は、常に生活費や療養費などを送っていれば対象になります。健康保険の扶養は、実の父母なら別居でもよく、親の収入が仕送りの額より少ないことが条件です。配偶者の父母は、健康保険では同居していることが条件です。

年金をもらっている親でも扶養に入れられますか?

入れられます。2026年分の税の扶養は、年金だけなら65歳以上で年金収入172万円以下、65歳未満で122万円以下が目安です。健康保険の扶養は、60歳以上なら年金を含めた年間収入が180万円未満で、遺族年金や障害年金も収入に数えます。

75歳以上の親は扶養に入れられますか?

健康保険の扶養には入れません。75歳になると後期高齢者医療制度に入るためです。税の扶養には年齢の上限がないので、所得などの条件を満たせば、75歳以上の親も扶養控除の対象になります。

きょうだいで同じ親を扶養に入れられますか?

税の扶養では、同じ親を扶養に入れられるのは、きょうだいのうち1人だけです。きょうだいが同じ額ずつ仕送りをしていても同じなので、だれの扶養にするかを話し合って決めます。

親を扶養に入れると、介護保険料や介護の自己負担は変わりますか?

変わりません。65歳以上の親は、扶養に入っても介護保険料を自分で市区町村に納めます。介護サービスの自己負担の割合は親本人の所得などで決まり、64歳以下の子の所得は数えません。高額介護サービス費の上限も、住民票上の世帯の状況で決まります。

出典

※本記事は2026年10月時点の情報に基づいて作成しています。税の扶養の金額は2026年分(令和8年分)のものです。実際の扱いは、勤め先の担当者、税務署、加入している健康保険にご確認ください。

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