制度・実務

介護保険料の年末調整|年金天引き・親の分の控除と書き方

監修 東急ウェルネス株式会社 介護離職防止サポート 責任者 A.T.

年末調整の書類に記入する会社員のイメージ

介護保険料は社会保険料控除の対象で、払った額の全額が所得から差し引かれます※1。ただし、給与から引かれている分は、年末調整の申告書に書く必要はありません。書くのは、自分や、生計を一にする親などの介護保険料を、納付書や口座振替で払ったときです。親の年金から天引きされている介護保険料は、子の控除にはなりません※2。この記事では、書く・書かないの見分け方、保険料控除申告書の書き方、払った額の確かめ方、名前の似た「介護医療保険料控除」との違いを、2026年分(令和8年分)の年末調整に向けて整理します。

年末調整で書く・書かないの見分け方

「介護保険料控除」と呼ばれることがありますが、所得税にその名前の控除はありません。公的な介護保険料は社会保険料控除の対象で、払った額の全額が差し引かれます※1※17。民間の保険の介護医療保険料は、生命保険料控除の一部で、別の控除です(下の節)。

介護保険料の払い方ごとに、保険料控除申告書に書くかどうかをまとめると、次のとおりです※2※3。

介護保険料の払い方 申告書に書くか 理由
給与から天引き
(40〜64歳の会社員)
書かない 給与から引かれた社会保険料は、申告書がなくても年末調整で控除されるため。書くと二重になる
自分で納付書・
口座振替で払った
書く 本人が直接払った社会保険料のため
親の分を子が納付書・
口座振替で払った
書く(生計を一にしている場合) 生計を一にする親族の社会保険料を払った人の控除になるため
親の年金から天引き 子は書けない 払ったのは、年金を受け取る親本人とされるため
自分の年金から天引き
(65歳以上で働く人)
勤め先に確かめる 年末調整に書くかどうかの案内が分かれているため(下の節)

40〜64歳の会社員の介護保険料は、健康保険料と一緒に給与から引かれています(協会けんぽの介護保険料率は、2026年3月分から1.62%)※16。この分は会社がすでに控除しているので、保険料控除申告書には書きません※3。

親の介護保険料は、子の控除にできるか

年金から天引きされている分は、できない

65歳以上の親の介護保険料は、年金が年18万円以上なら、原則として年金から天引き(特別徴収)されます。この場合、保険料を払ったのは年金を受け取る親本人とされ、子の社会保険料控除には入れられません※2※3。

また、介護保険料は、本人の希望で年金からの天引きをやめて口座振替に変えることはできません(災害などの特別な事情があるときを除きます)※4。後期高齢者医療制度の保険料は、手続きで口座振替に変えて子の口座から払えば子の控除になりますが、介護保険料ではこの方法は使えません※2。

納付書・口座振替で払っている分は、できる

親の介護保険料が納付書や口座振替(普通徴収)で、生計を一にする子が実際に払った場合は、子の社会保険料控除に入れられます※3。口座振替なら、払ったのは口座の名義人とされるので、子の名義の口座から引き落とされた分が子の控除になります。親の名義の口座から引き落とされた分は、親の控除です※5。

親の介護保険料が普通徴収になるのは、たとえば次のような場合です※6。

  • 65歳になった直後(年金からの天引きが始まるまでの間)
  • 年度の途中で、ほかの市区町村から引っ越してきた
  • 受け取る年金の額が年18万円未満
  • 年金の種類が変わった

「生計を一にする」は、同居が条件ではありません。別に暮らしていても、常に生活費や療養費などを送っていれば当たります※7。親を税や健康保険の扶養に入れる条件は、親を扶養に入れる条件|税と健康保険の違い・別居・75歳以上で整理しています。

親の後期高齢者医療保険料・国民健康保険料は

親の後期高齢者医療保険料や国民健康保険料も、介護保険料と同じく社会保険料控除の対象です。ただ、払い方の決まりが少し違います。

  • 後期高齢者医療保険料(75歳以上):年金から天引きされる分は、親本人の控除です。介護保険料と違い、申し込めば口座振替に変えられ、生計を一にする子の口座から引き落とせば子の控除になります※2※21※22
  • 国民健康保険料(税):納めるのは世帯主です※23。年金から天引きされている分は、年金を受け取る世帯主本人の控除になります※24。子が納付書や子の口座で払った分は、生計を一にしていれば子の控除の対象です※1

口座振替に変える手続きや、天引きが止まる時期は、市区町村によって違います。親の住む市区町村の窓口で確かめます。

65歳以上の人の、自分の介護保険料|働く人・年金だけの人

65歳になった月の分から、介護保険料は給与から引かれなくなり、住んでいる市区町村に納める形に変わります(健康保険料は、そのあとも給与から引かれます)。65歳になった直後は納付書か口座振替で納め、しばらくして年金からの天引きに切り替わるのが一般的です※8。

納付書や口座振替で自分が払った分は、年末調整の申告書に書けます。一方、年金から天引きされた分は年金を受け取る本人の控除になりますが、年末調整の申告書に書くかどうかは、案内が分かれています。年金から天引きされた分は、翌年1月に届く「公的年金等の源泉徴収票」に載るため、年末調整に入れると二重になるとして、年末調整では納付書や口座振替の分だけを書くよう案内している市もあります※9。年金から天引きされた分の扱いは、勤め先の年末調整の担当者に確かめてください。

給与と年金の両方を受け取っている人は、多くの場合、確定申告が必要です※10。確定申告では、年金から天引きされた分は「公的年金等の源泉徴収票」の金額を使います。年末調整と確定申告で、同じ保険料を二重に控除しないようにします。介護保険料がいつまで、どう引かれるかは、介護保険料はいつまで払う?40歳から一生・いくら引かれるかで解説しています。

年金だけで暮らす人は、確定申告で

年末調整は給与を受け取る人の手続きなので、年金だけで暮らす人にはありません。年金から天引きされた介護保険料は、年金の所得税を源泉徴収するときにすでに差し引いて計算されていて、翌年1月に届く「公的年金等の源泉徴収票」の「社会保険料の額」に載ります※10※17。

次の3つにすべて当てはまる人は、確定申告をしなくて構いません※17※18。

  • 公的年金等の収入が、年400万円以下
  • その年金の全部が、源泉徴収の対象
  • 年金以外の所得(給与所得なども含む)が、年20万円以下

ただし、65歳になった直後などに納付書や口座振替で払った介護保険料は、年金の源泉徴収では差し引かれていません。この分を控除に入れるには、確定申告(還付申告)が要ります※19。医療費控除などで確定申告をするときは、源泉徴収票の社会保険料の額も社会保険料控除に入れます。手書きの申告書なら、保険料の種類の欄に「源泉徴収分」と書きます※20。確定申告が要らない人でも、住民税の申告が要る場合があります※18。

保険料控除申告書の書き方|社会保険料控除の欄

給与所得者の保険料控除申告書の社会保険料控除の欄の記入例。親の介護保険料と後期高齢者医療保険料を子の名義の口座から払った場合で、保険料の種類・支払先の名称・保険料を負担することになっている人の氏名・本年中に支払った金額と合計を書いた図

書くのは「給与所得者の保険料控除申告書」の右側にある「社会保険料控除」の欄です。2026年分の様式の項目は次の4つで、記入の例は当社が示すものです※11。

欄 書くこと 記入の例
社会保険の種類 介護保険料であること 介護保険料
保険料支払先の
名称
介護保険料を納めた市区町村 ○○市
保険料を負担する
ことになっている
人の氏名
介護保険料がかかっている人(自分か、親など) (親の氏名)
本年中に支払った
保険料の金額
その年に実際に払った額の合計 (領収書・通帳で確かめた合計)
  • 証明書は要らない:添付が必要なのは、国民年金保険料と国民年金基金の掛金だけです。介護保険料は付けなくて構いません※3
  • 続柄を書く欄はない:社会保険料控除の欄の「続柄」は、2024年分の様式からなくなりました※11
  • 払っていない分は入れない:書くのは実際に払った額です。納付の期限が来ていても、払っていない分は入りません※3
  • 出す時期:その年の最後の給与を受け取る日の前日までに、勤め先に出します

国税庁の記載例には「介護保険料」という見出しの説明がありますが、これは民間の保険の介護医療保険料(生命保険料控除)の書き方です※12。公的な介護保険料は、社会保険料控除の欄に書きます。

欄に書ききれないとき

2026年分の申告書の社会保険料控除の欄は、書き込む行が2行しかありません※11。自分の介護保険料と親の介護保険料、親の後期高齢者医療保険料などを書くと、足りなくなることがあります。国税庁の記載例は、記載欄が足りないときは「適宜の様式に記載して、この申告書に添付」するよう案内しています※12。別の紙に、同じ4つの項目(種類・支払先・氏名・金額)を書いて付けます。合計の書き方なども勤め先で決めていることがあるので、迷ったら担当者に確かめます。

払った額の確かめ方

  • 納付書で払った分:手元の領収書を合計します
  • 口座振替の分:通帳の記帳で、1月から12月に引き落とされた分を合計します
  • 年金から天引きされた分:翌年1月に届く「公的年金等の源泉徴収票」の「社会保険料の額」を見ます。国民健康保険料なども天引きされていれば合計の額で、内訳は摘要の欄にあります

市区町村から届く「介護保険料額決定通知書」の額は、4月から翌年3月までの年度の額なので、申告する1月から12月の額とは一致しません。「納付済額のお知らせ」などを送る市区町村もありますが、届くのは年末調整のあとの1月下旬が多く、送らない市区町村もあります。年末調整に間に合わないときは、領収書や通帳で合計するか、市区町村に問い合わせます※13。

「介護医療保険料控除」との違い

名前は似ていますが、公的な介護保険料と、民間の保険の介護医療保険料は、別の控除です※14。

項目 介護保険料(公的) 介護医療保険料(民間)
控除の名前 社会保険料控除 生命保険料控除のうちの介護医療保険料控除
対象 市区町村や健康保険に納める介護保険料 保険会社などの医療保険・介護保険の保険料(2012年1月以後の契約)
控除される額 払った額の全額 所得税は最高4万円、住民税は最高2.8万円
証明書 要らない 控除証明書が要る

生命保険料控除は、一般・介護医療・個人年金の3つを合わせて、所得税で最高12万円です※14。民間の保険の控除額の計算と、申告書のどの欄に書くかは、介護医療保険料控除とは|対象の保険と計算式、年末調整の書き方で解説しています。

書き忘れたとき・間に合わなかったとき

年末調整のあとに保険料を払った場合などは、勤め先が源泉徴収票を渡す翌年1月末までなら、年末調整をやり直してもらえることがあります※3。書き忘れに気づいたら、まず勤め先の担当者に相談します。

間に合わなければ、自分で確定申告(還付申告)をすれば控除を受けられます。還付申告は、翌年の1月1日から5年間出せます※15。住民税の社会保険料控除も払った額の全額で、2026年に払った分は2027年度の住民税で差し引かれます。

人事担当者の方へ|年末調整の時期に案内したいこと

  • 給与天引き分は書かない:40〜64歳の従業員の介護保険料は給与から引いているので、申告書に書かないよう案内します
  • 親の年金天引き分は控除できない:親の年金から天引きされている介護保険料は、子の控除にならないことを伝えます
  • 65歳以上の従業員:年金から天引きされた分を年末調整に入れるかは、二重の控除にならないよう、社内の扱いを決めておきます
  • 取り違え:民間の介護医療保険(生命保険料控除)と、公的な介護保険料(社会保険料控除)を取り違えた記入がないかを見ます

2026年分は、扶養親族の所得の上限が62万円に上がりました。親の介護が始まった従業員には、扶養の見直しもあわせて案内すると親切です。

よくあるご質問

介護保険料は年末調整で控除できますか?

できます。介護保険料は社会保険料控除の対象で、払った額の全額が控除されます。ただし、給与から引かれている介護保険料は、申告書を出さなくても年末調整で控除されるので書きません。書くのは、自分で直接払った分や、生計を一にする親などの介護保険料を払った分です。

年金から引かれる介護保険料は、年末調整で申告する必要がありますか?

年金から天引きされた介護保険料は、年金を受け取る本人の控除になります。子が親の分を申告することはできません。65歳以上で働く本人の年金天引き分を年末調整に書くかは案内が分かれているので、勤め先の担当者に確かめ、確定申告と二重に控除しないようにします。

親の介護保険料を払っていますが、私の控除になりますか?

生計を一にする親の介護保険料を、納付書や自分の名義の口座からの口座振替で払った場合は、あなたの控除になります。親の年金から天引きされている分や、親の名義の口座から引き落とされている分は、親の控除です。

介護保険料の年末調整に、証明書は必要ですか?

必要ありません。保険料控除申告書に証明書の添付が必要なのは、国民年金保険料と国民年金基金の掛金だけです。勤め先から額の確認を求められたときは、領収書や通帳、市区町村の納付額の書類などで示します。

介護保険料と介護医療保険料は、同じ控除ですか?

別の控除です。市区町村などに納める公的な介護保険料は社会保険料控除で、払った額の全額が控除されます。民間の保険の介護医療保険料は生命保険料控除のひとつで、所得税は最高4万円、控除証明書が必要です。

65歳以上の介護保険料は、年末調整でどう書けばよいですか?

納付書や口座振替で自分が払った分は、保険料控除申告書の社会保険料控除の欄に、種類(介護保険料)、支払先の市区町村、自分の氏名、その年に払った額を書きます。年金から天引きされた分の扱いは、勤め先の担当者に確かめてください。

「介護保険料控除」とは何ですか?

公的な介護保険料に使える控除のことを指して、こう呼ばれることがありますが、所得税の控除の名前は社会保険料控除です。払った額の全額が控除されます。民間の保険の介護医療保険料は生命保険料控除の一部で、別の控除です。

年金だけで暮らしている場合、介護保険料はどうすればよいですか?

年金から天引きされた介護保険料は、年金の源泉徴収ですでに差し引いて計算されています。公的年金等の収入が400万円以下で、その全部が源泉徴収の対象で、年金以外の所得が20万円以下なら、確定申告は要りません。納付書や口座振替で払った分を控除に入れたいときや、医療費控除を受けるときは、確定申告をします。

保険料控除申告書の社会保険料控除の欄に書ききれないときは、どうしますか?

欄は2行しかありません。国税庁の記載例では、記載欄が足りないときは適宜の様式に記載して申告書に添付するよう案内しています。別の紙に種類・支払先・氏名・金額を書いて付けます。勤め先で書き方を決めていることもあるので、担当者に確かめると確実です。

親の後期高齢者医療保険料は、子の控除にできますか?

親の年金から天引きされている分は、親本人の控除です。申し込めば口座振替に変えられるので、生計を一にする子の口座から引き落とせば、子の社会保険料控除になります。介護保険料には、この方法はありません。

出典

※本記事は2026年11月時点の情報に基づいて作成しています。年末調整での具体的な扱いは勤め先の担当者に、控除の要件は税務署に、納付額は市区町村にご確認ください。

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